バスタブ
おなかがすいたの
1
物心ついたときから、俺は綺麗な人間を見ることができた。母や父、町をすれ違う大人は、いつも綺麗な人間を引き連れていた。綺麗な人間は、表情を変えることもなく、ただ黙ってそこにいる。大人達はまるでそんな人間はいないかのように振る舞っていた。俺は漠然と、彼らには見えていないのだと感じていた。
母のそれは綺麗な少女。父のそれは綺麗な青年。隣の家の大学生も綺麗な少年を連れていた。
「お母さんの連れてる子、いつからいるの?僕にもいつかそんな子がつくの?」
俺がそう問えば、母は怪訝そうな顔をした。今でも思い出す。少女の腕を掴んだつもりの俺の手は、空を切った。
「・・・ねぇ、何したの?今」
「やっぱり見えてなかったんだ。その子の手をつかもうとしたんだけど」
母の脇の少女を指差した俺を、母は病院へ連れていった。勿論、行った先の病院の医師も綺麗な人間を連れていた。機械で脳を検査され、精神科へ回された。異常はなく、母は俺に言った。
「啓吾は守護霊が見えるの。普通の人には見えないのよ。だから、誰にも見えるって言っちゃダメ」
その時俺は、周りの人間にはやはり見えていなかったのだと知った。俺は、綺麗な人間が母が言うような守護霊などの霊的なものではないと気づいていた。当時、幼稚園児だった俺と同年代の子どもには綺麗な人間はついていなかったからだ。
そして俺、椿野啓吾(つばきのけいご)は中学生にしてようやく長年の疑問を解決した。
綺麗な人間は「淫魔」という魔物だった。
2
小学校の高学年になれば、綺麗な人間を連れている奴はちらほらいた。
中学に進学する頃には、綺麗な人間を連れている同級生はわっと増えた。先輩に至っては、ほとんどが綺麗な人間を連れていた。
そして、俺がある朝目覚めると、綺麗な人間がベッドのそばに立っていた。ああ、俺のだと、起きたばかりの頭で漫然と考えた。綺麗な人間にもそれぞれ個性があるが、俺のは、ショートボブの黒い髪に抜けるような白い肌、日本人にはありえない紫色の瞳をしていた。俺よりも小さな可愛い顔の少年だった。服装は白いワイシャツに黒いネクタイと短パン、サスペンダー。外国の裕福な家の子どものようだ。
「会いたかった」
俺は一目で少年が気に入った。
「・・・僕が見えるの?」
少年はびっくりした顔で俺を見つめた。頷く。
「お前は、何?」
少年は、淫魔だと言った。
「いんま・・・?」
「うん、ぼく、ご主人さまが精通したから来たの。死ぬまで、いっしょ・・・」
少し潤んだ瞳。ぎしりと俺のベッドに乗り上がる。
「ご主人さまの、はじめての、精液」
俺のズボンを引いた淫魔。パンツは精液で濡れていた。俺は性知識に関心がなく、なんとなくは知っていたものの、実際のことは何一つ経験していなかった。昨晩に夢精したのだと、かろうじてわかる。
3
淫魔の少年は、俺のパンツを舐めた後、性器を口に含んだ。
「ん、ちゅ・・・は、ん、くちゅ」
「っ・・・は?ちょ・・・・・・くっ」
待てと言う暇もなく、初めての感覚に、少年の口の中に放ってしまった。こくんと飲んだ少年。
「おいし・・・」
うっとりした表情に、俺は鼓動を高鳴らせた。可愛い。
「本当なら、眠ってるあいだに気づかれないように精液をうばわなきゃだめなの。だけど、ご主人さまが、ぼくのこと、見えるなら・・・」
上目遣いに俺を見る。
「もっと、いっぱぃくださぃ・・・」
あまりの色っぽさに目を奪われた。また口でされるのかと思えば、淫魔はサスペンダーを取ってふともものあらわな短パンを脱いだ。小さな無毛の性器が現れる。腰を落として、俺の性器を尻に入れた。
「ぁ、ぅ・・・」
「・・・っ」
熱く柔らかな肉に締めつけられる。
「ぁ、ん、ご主人さまぁ・・・」
ゆっくり腰を上下させはじめた淫魔。
「ご主人さま、びくびく、してゆ・・・なかに、だして」
嬉しそうに俺に抱き着いた淫魔に、俺はまたすぐに放ってしまった。
「ひ、ぁ・・・っ」
きゅぅっと搾られる。
「はぁっ、は・・・」
俺は慣れない二度の射精に息を乱した。
4
いい匂いのする淫魔の少年を抱きしめていると、下から母の声がした。時計を見る。
「マジかよ・・・」
今から家を出ても遅刻ぎりぎりの時間。俺は学ランを着込む。淫魔が俺を見上げた。
「がっこう?」
「ああ」
部屋を出て、階段を降りて、母親からパンを受け取り家を出た。
登下校中も学校でも、淫魔は無表情だった。
「決まりなの」
「無表情でいることが?」
淫魔がこくりと頷く。
「ご主人さまじゃない人がいるところで顔を崩すのは、淫魔の恥だから」
「見えないのに?」
淫魔は再び頷いた。
「・・・なぁ、お前のこと、俺に教えてくれるか?」
淫魔は嬉しそうに微笑む。
「僕の名前は、アルバージ。アルって呼んでください」
「俺も、ご主人さまじゃなくて、啓吾でいい」
アルが言うには、淫魔は眠っている主人に術をかけて起きないようにし、人間から精液や膣液を奪うらしい。俺のように淫魔が見える人間は、本当に稀な存在だが、夢を通して淫魔を見ることができる人間はちらほらいると言う。
「学校で、食事の仕方を習って・・・」
「食事の仕方?」
アルは頷く。
「ご主人さまを・・・けいごを、きもちよくして、いっぱい、おちんちんから、しぼる方法」
俺はごくりと唾を飲んだ。
「ぁ・・・けぃご、興奮した・・・?」
僕、わかるのなんて言って頬を桃色に染める。そんな仕種も、学校で習ったものなのだろうか。
5
僕のご主人さまの啓吾は、日本人の大学生です。精通は、中学校の一年の時。淫魔の僕は、その時から啓吾の隣にいます。啓吾は気づいていないだけで、女の子に凄く人気がある。黒髪は、少しくせがあって、瞳は切れ長の二重。長身の啓吾の颯爽とした雰囲気に、誰もが振り返ります。
「アル」
僕の名前を呼ぶ、甘くて低い声。初めて出会った時よりも、ずっと低くなりました。
「食事は?」
「する・・・」
シャワーをしてきた啓吾は、腰にバスタオルを巻いただけの格好で、しゃがんで僕を抱きしめました。しっとりしている肌。上機嫌で、僕の服を脱がせていきます。
「目を閉じても、アルの服を脱がせられる」
唇がくっついて、舌が入ってきました。昔はこんなに上手じゃなかったのに。
「け、ご・・・ちゅ、む、ん・・・は、ふっ・・・ぁ」
唾液がつぅと糸を引いて、いやらしい。
「・・・んっ」
いつの間にか僕は裸で、足元に洋服が散らばっていました。乳首を舐められて、ぴくぴくしました。
「なめなめしちゃ、やぁ・・・」
はやく食事がしたくて、僕はいやいやをしました。高校生になった辺りから、啓吾は僕の身体を触ることに目覚めて、たくさん愛撫をするようになりました。昔は、主導権を淫魔の僕が握っていたのに、今では啓吾に焦らされています。啓吾は大人になったのに、淫魔は成長しないから、僕は子どもの姿のまま。なんだか少し悔しいです。
6
「あ、ぁん、ぁーっ、ひぁあぁあんっ」
僕はおちんちんを痙攣させました。啓吾は乳首を指でいじりながら、僕のおちんちんを舐めしゃぶります。何も出ないけど口の中で跳ねる僕のおちんちんは、啓吾のお気に入りらしいです。啓吾は、身体をくったりとベッドに預けた僕のおちんちんを再び舐め始めました。
「ぁ、あ・・・ゃぁ・・・も、らめっ、らめぇ、け、ご、はやく、おちんちん、おしりにちょぅだぃ・・・」
我慢できなくて、僕は涙を流しました。
「・・・可愛い」
啓吾は楽しそうに、僕の涙を舐めとります。
「じゃあ、俺の、舐めて」
啓吾がバスタオルを落としました。少し勃起している啓吾のおちんちんに、僕は唇をつけました。啓吾はおちんちんも、出会った時より大きく成長しています。僕は口に入れるのも精一杯で、手も使います。口の中を擦られて、気持ちいい。しばらくそうしていると、啓吾は僕の口からおちんちんを抜きました。
「ど、して・・・?」
涙がぽろぽろ溢れました。下手だからでしょうか。中学校、高校と歳を重ねる内に啓吾はだんだん慣れて、早く射精しなくなりました。淫魔の学校で僕が習った技術では、啓吾は満足できなくなってしまったのでしょうか。
「どうして泣くんだ?」
啓吾は僕の涙を手で拭いました。
7
「だって、けぇご、せいぇき、くれなぃ・・・」
啓吾は驚いた顔。
「お尻にって言ったのはアルだろ?」
僕は瞬きをしました。
「ひぁあっ、ぁ、あ、やぁぁっ、はげし、の・・・ぁ、あ、ん、けぃ、ご、けぇごっ・・・ぁあぁあんっ」
ぐちゅぐちゅして気持ちいい。大きい啓吾のおちんちんが、お尻を擦ります。ぱんぱんと音がする。
「ぐちゅぐちゅ、きもち、ぁぁあっはぁぁあんっ、ぁ、ん、もっと、して、けぃご、たくさん、かけて・・・」
啓吾が抜くのに合わせてお尻を締めます。啓吾が中でびくんと跳ねました。
「ぁ、あ・・・でりゅ・・・?け、ご、おちんち、どぴゅってして、いじわりゅしちゃ、いゃぁ・・・」
うまく口が回らないけど、頑張っておねだりしました。
「零すなよ・・・?」
僕は頷いて、お尻に精液をいっぱい受けます。
「ひぁあぁぁあんっ」
気持ちくて、僕は啓吾にしがみついて痙攣しました。
「啓吾、いじわる・・・」
おなかがいっぱいになるくらい精液をもらったけど、僕は少し悲しいです。
「前は、もっとはやく精液くれたもん・・・」
啓吾は僕の耳元で囁きました。
「・・・突っ込まれて、中だしされるだけで、アルは満足か?俺に触って欲しくない?」
僕は首を振ります。
「でも、どうして、触るの?」
「相手を気持ちよくさせたいから。それに、アルの気持ちよさそうないやらしい顔に俺は興奮する」
気づいてなかった?と啓吾が言います。僕は真っ赤になりました。
「・・・それに俺は、アルのただの食い物でしかないなんて嫌だ。本気だから・・・」
淫魔の僕は本来なら主人に関わることさえもできないのに。幸せで、僕は啓吾の腕の中で小さく泣きました。