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ぼくのかわいいくまさん



「美哉、起きろ」
ゆさゆさと揺すぶられて、僕、後藤美哉(ごとうよしちか)は布団に潜り込みました。布団の下で小さく丸くなります。まったく、と善治(ぜんじ)お兄ちゃんの呆れたような声がしました。
「今日は兄貴の学校の学祭に行くんだろ。・・・今起きないと連れてってやらないぞ」
被っていた布団をぎゅっと締めつけて小さくすると、お兄ちゃんと目が合いました。
「おはよう、美哉」
お兄ちゃんが笑います。くしゃくしゃと髪を撫でられて、僕は目を細めました。
「兄貴のサークルの催しは11時からだけど、美哉小さいし、場所取りするために早く行かないとな」
小学生の僕には、高校生の善治お兄ちゃんと、大学生の真仁(さだひと)お兄ちゃんがいます。




真仁お兄ちゃんの大学は、家から電車で20分の所にあります。

校門を通ってすぐに、大きくてカラフルな動物たちがチラシと風船を配っていました。水色の犬さんが、お兄ちゃんです。


お兄ちゃんのサークルは、今年大学4年生になるお兄ちゃんと友達の志村さんが2年生の時に作ったサークルです。お兄ちゃんも志村さんもずっと体操部に入っていましたが、大学では体操部に入りませんでした。お兄ちゃんは何も言いませんが、お兄ちゃんも志村さんも身長が高いのでたくさん回転する難しい技ができないのかも知れないと善治お兄ちゃんが教えてくれました。
1年生だったお兄ちゃんと志村さんは部活もサークルも入らずに、バイトをしていました。遊園地の着ぐるみのバイトです。その遊園地は今はもうありません。お兄ちゃんと志村さんは遊園地の経営者に着ぐるみを貰いました。

お兄ちゃんのサークルは、着ぐるみ体操サークルです。




桃色の兎さん、水色の犬さん、黄緑色の猫さんがいます。真仁お兄ちゃん、犬さんは写真のお客さんと肩を組んでの被写体に忙しそうでした。奥には黄色の虎さん、白色の狼さんと茶色の熊さんが見えます。
「お兄ちゃん、熊さんがいる!」
「熊?」
真仁お兄ちゃんのサークルの普段の活動は、小学校の体育館や大きな公園で行うイベントで、僕は何度も見に行っていました。お兄ちゃんが打ち上げの二次会だと言ってサークルの人たちを家に連れてきたこともあって、僕は誰がどの着ぐるみに入っているのか知っています。それでも、茶色の熊さんを見るのは初めてでした。僕は、春にお兄ちゃんが新入りが入ったと喜んでいたのを思い出します。きっと熊さんがその人です。熊さんの着ぐるみを近くで見たくて、僕はお兄ちゃんにお願いしました。

熊さんの着ぐるみはふわふわで暗めの茶色。口とお腹の部分が白です。着ぐるみ自体は新しいものではないみたいで、お兄ちゃんたちの着ぐるみと同じシリーズでした。目は少し縦長の丸で、白地の中に大きな緑色の丸と小さな黒色の丸が重ねられています。かわいい。
「こんにちは」
挨拶をすると手を振ってくれました。着ぐるみの中の人は喋りません。喋っちゃいけないそうです。熊さんはお兄ちゃんにチラシを、僕に風船をくれました。




たくさん席のあるドーム型の大講堂。風船を席の下に入れて、僕はお兄ちゃんと中央の列の前の方に座っていました。ステージを使った出し物はお兄ちゃんたちのサークルがトップバッター、オープニングセレモニーです。僕は講堂に入る時に貰ったパンフレットを見ていました。後ろの方にサークル紹介のページを見つけて、僕は着ぐるみ体操サークルの所を見ます。メンバー紹介にお兄ちゃんの名前を見つけました。少し暗くなります。善治お兄ちゃんが僕の手元を覗き込んでいました。
「兄貴、志村さん、稲本さん・・・ってことはこれが熊さんだな。きゅうま、か・・・?」
「・・・くまさん?」
「おお、くま、か」
そうとも読める、とお兄ちゃんが笑います。久間、とありました。




講堂が暗くなります。ステージにいくつもの色のスポットライトが差しました。音楽が鳴って、ライトに照らされた動物たちが踊ります。宙返りや開脚旋回、体操の技も入っています。全員で息のそろったダンスをしたり、2人になってアクロバットな演技をしたり。かわいくて、かっこいい。あっという間の15分でした。



善治お兄ちゃんは4時からバイトです。僕たちはステージもそこそこに席を立ちました。

大講堂を出て校門へ向かう途中で、お兄ちゃんがマズイと言って止まりました。パンフレットの裏の敷地案内を見ています。
「湍水に頼まれたCD買ってねぇ・・・。経済学部棟ってスゲー遠いな」
ため息を吐くお兄ちゃん。友達にお使いを頼まれていたようです。僕の手を引いて中庭の方へ行きました。噴水のある人気のない中庭です。
「あそこで座って待っててくれるか?ひとっ走り行ってくるから」
木の後ろにちょっと見えるベンチを指差して、お兄ちゃんが言いました。僕は頷きます。


木の後ろのベンチの方に回ると木陰になっていて、熊さんがいました。僕が正面に立っても、ベンチに座る熊さんは動きません。さわさわと気持ちいい風が吹いています。熊さんは眠っているみたいでした。僕は隣に座って、お兄ちゃんを待つことにしました。




気がついたら家のソファーにいて、お母さんが僕が善治お兄ちゃんにだっこされて帰ってきたと教えてくれました。僕は熊さんの隣で眠ってしまったのです。
「今晩真仁のサークルの子達が来るみたいだから今日もお父さんとお母さんの部屋で寝る?」
僕の部屋は真仁お兄ちゃんの部屋の隣にあります。お兄ちゃんの友達が来ると夜中まで賑やかなので、僕はいつもお父さんとお母さんと一緒に寝ていました。




トイレに行きたくなって、寝ているお父さんの横から抜けだしました。廊下に出ると、真仁お兄ちゃんの部屋から明かりと声が漏れています。トイレの扉から、大きな人が2人出て来ました。
「・・・悪いな・・・だいぶ楽になった」
「大丈夫ですか?志村先輩、今日は俺が駅まで送りますよ」
志村さんと、誰かの声。
「ん?・・・美哉じゃないか」
「君が後藤先輩の?」
暗くてよく見えません。こんばんは、と言うと志村さんがしゃがみました。お酒臭いです。
「こんばんは。久間は美哉君に会うの初めてか」
志村さんが上を見上げて言いました。くま。
「くまさん・・・?」
「あ、はい。久間裕太郎です。よろしく。美哉君」
久間裕太郎(くまゆうたろう)さん。久間さんもしゃがみました。髪が茶色くて、目は灰色っぽい緑。着ぐるみの熊さんが人間になったみたいです。びっくりしている僕に志村さんが言いました。
「日本語超上手いし名前も純和風だけど、久間はこの通りロシア人な。グリズリー!」
「グリズリーは北アメリカの熊だったと思うんですけど・・・。そんなことより、美哉君、今日大学来てたよね?」
僕はどきどき。何回も頷きました。



朝が来て、昨日とは反対に、僕がお兄ちゃんをゆさゆさと揺すります。僕はお兄ちゃんに報告したいことがありました。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、起きて」
「んー・・・美哉がチューしてくれたら起きる・・・」
早く起きて欲しくて、お兄ちゃんのほっぺにキスをすると、お兄ちゃんはがばっと起き上がりました。
「マジ?・・・美哉、誰でも簡単にチューしてるとかないよな・・・?」
僕は首を振ります。家族にしかしません。そんなことよりも。
「あのね、あのね、お兄ちゃん、熊さんは久間さんで熊さんだった」
「は?・・・あ、着ぐるみの件?あの苗字くまって読むのか?」
じゃあ美哉が正解だったんだな、と頭を撫でるお兄ちゃん。
「本当に熊さんみたいな人だったの」
「へぇ。会ったのか」
「夜、トイレに行く時に。志村さん酔っ払ってた」
「ああ見えて意外と弱いからな、あの人」
あ、とお兄ちゃんが言いました。




ベッドから出たお兄ちゃんはパソコンに携帯電話を繋いで、何か印刷しました。
「ん」
渡されたそれは写真で、木陰のベンチで熊さんに凭れて眠っている僕がいました。熊さんとツーショットの写真です。
「昨日、ゆっくりできなくて悪かったな。写真も全然撮れなかったけど、一枚だけ」
ちゃんと熊さんに許可貰って撮ったんだぜ、とお兄ちゃんが言います。え、と僕。
「熊さん、起きてた?」
「?ああ、起きてたけど?」
お兄ちゃんが来た時には熊さんはもう起きていたようです。写真を見ると凭れかかっているので、僕は恥ずかしくなりました。忘れていましたが、お兄ちゃんにも謝らないといけません。
「あの、お兄ちゃん、昨日の帰りはごめんなさい」
久しぶりのだっこだったな、とお兄ちゃんは意地悪く笑いました。



お兄ちゃんと一緒に部屋から出ると、志村さんがトイレから出てくる所でした。
「おはよう、善治、美哉」
「おはようございます。志村さん、泊ってたんですね」
お兄ちゃんが言いました。おう、悪いな、と志村さんが苦笑します。
「久間がべらぼうに酒強いもんだから、皆ムキになって。終電逃して真仁の部屋で雑魚寝よ」
「兄貴合わせて6人でしたよね?親父もお袋もいないんで、俺が飯作りましょうか」
今日は日曜日ですが、お父さんもお母さんも朝早くから会社に行っていました。善治お兄ちゃんは本格派の中華料理屋でバイトしていて、料理が上手です。
「善治の飯うまいから嬉しいんだが、今日は俺だけじゃなく全員二日酔いだからなぁ・・・。気持ちだけ貰っとく」
志村さんが言いました。




善治お兄ちゃんが作ってくれた朝食を食べて、部活に行くお兄ちゃんを見送りました。僕は自分の部屋に戻るために階段を上ります。真仁お兄ちゃんの部屋の扉が少し開いていました。さっきの志村さんの話からすると、久間さんもまだお兄ちゃんの部屋にいる筈です。僕はちょっとどきどきしながら、ドアに近づきました。
「あ、美哉君じゃないか。おいでー」
覗く間もなく手を取られて、僕はお兄ちゃんの部屋に入っていました。僕の手を取ったのは池野さんでした。部屋には、お兄ちゃんのサークルの人が皆揃っています。お兄ちゃんと稲本さん、駒沢さんが床に伏していました。
「あれはお酒に負けた人達の屍」
へらっと笑って、池野さんが言います。
「久間ー。真仁の弟の美哉君紹介してあげるー」
池野さんが久間さんを呼びました。
「昨日の夜トイレの前で会って、俺が紹介した」
志村さんが言います。紹介してもらいました、と久間さんは笑いました。
「おはよう、美哉君」
きらきらの笑顔です。僕はどきどきします。
「本当?酔っ払った志村の言うことなんて信用できないなー。美哉君、久間の下の名前は?」
「ゆうたろうさん・・・」
ちょっと不安でしたが、間違ってない筈です。久間さんが顔を真っ赤にしました。
「ぼんって効果音が聞こえたのは空耳か?見事なまでの茹で蛸ぶりだな、久間」
「へー、はー、なるほどねー。美哉君、もっと名前、呼んでみてよ」
池野さんに言われて、僕はもう一度久間さんの名前を呼びました。耳まで真っ赤にした久間さんが、勘弁してください、と小さな声で言います。何だか僕も恥ずかしくなって、顔が熱くなりました。
「おー、久間、脈ありじゃん」
からかわないでください、と久間さんが言いました。




久間さんのことを考えると、どきどきします。僕はベッドの上でため息を吐きました。大学祭から1ヶ月も経っているのに、ずっと久間さんと会っていません。真仁お兄ちゃんの部屋に皆が来ることはありましたが、真夜中なので寝ている僕は久間さんに会えないのです。


「今晩、また真仁のサークルの子達が来るらしいぞ。美哉、またお父さん達の寝室に来るか?」
お父さんが言いました。僕は首を振ります。明日は土曜日で学校はありません。遅くまで起きていても大丈夫です。


賑やかだった隣の真仁お兄ちゃんの部屋が段々静かになっていきます。音がしなくなってから、僕は壁に耳をあてました。部屋を出ます。お兄ちゃんの部屋は、ドアの隙間から明かりが漏れていました。まだ誰か起きているのかも知れませんでしたが、僕はゆっくりドアを開けました。電気を点けたまま、皆眠ってしまっています。僕は、久間さんを見つけました。机の上に開いたノートに顔をのせて眠っています。近づいて、じっと久間さんを見つめました。睫毛が長い。かっこいい顔です。不意に久間さんの頬が赤くなりました。
「くまさん?」
起きているのでしょうか。僕はどきどきします。あの灰緑色の瞳が見たい。起きて欲しくて、お兄ちゃんを起こした時みたいにほっぺにキスをしました。耳まで真っ赤になる久間さん。
「ぁ・・・」
久間さんは起きています。確信して、凄く恥ずかしくなって後退ると、ぱちりと久間さんの目が開きました。視線が絡まります。
「ぁの、ぁの・・・ごめんなさい・・・」
ほっぺが熱い。後退る僕の手を、久間さんが掴みました。




僕は僕のベッドが、ぎし、と軋むのを初めて聞きました。
「んふ、ちゅ、ふ・・・」
舌がくちゅくちゅ絡まって、凄くきもちいい。僕は久間さんとキスをしていました。久間さんが近くて、いい匂いがします。ぷちぷちとパジャマのボタンを外されて、胸がすうすうしました。乳首をちゅう、と吸われて、僕は腰のあたりを震わせます。
「ひぁん・・・」
「乳首、気持ちいいの?」
親指で優しくくりくりされて、鼻からくぐもった息が漏れました。
「・・・こっちは?」
久間さんの手がお臍を撫でて、ズボンの中へ滑り込みました。パンツの上からおちんちんを触ります。
「ん、だめぇ・・・」
僕は久間さんの手首を掴みましたが、久間さんの手はおちんちんをもみもみしていじめるのをやめません。
「ぁっ、ぁ・・・ん」
足がもじもじします。
「・・・凄い可愛い」
久間さんはそう言って、太ももの方からパンツに手を入れました。皮の中のおちんちんの先っぽをぐりぐりされます。
「ん、ん・・・ゃ、っ、はぁぁん・・・っ」
身体がぴくぴくしました。
「イっちゃったの?」
久間さんが僕のほっぺにキスをしています。気持ちよくてふわふわしました。ズボンとパンツを脱がされて、おちんちんを口に入れられます。
「ひゃぅ・・・っらめ、らめぇ・・・っ」
おちんちんがあったかくてぬるぬるしたお口の中で、吸われたり擦られたりしています。
「ひぁぁ・・・くふ、ゃ、ゃ、むぃちゃ、ゃぁあ・・・」
おちんちんの皮が下に引っ張られます。
「んゃぁあぁっ」
ちょっと皮から出ているおちんちんの先が久間さんの舌にくりくりされて、じゅくじゅくしました。
「ぁ、んんっ」
ちゅるん、と皮が下りて、僕は気持ち良くて、震えました。久間さんが喉を鳴らします。




久間さんの腹筋に手をついて、腰を振ります。お尻に入った久間さんの大きいおちんちんが熱い。にゅちにゅちとえっちな音がしていました。
「ひ、ぁ、ぁぁ、ん・・・」
大きな手が僕の髪をかきあげて、そのままほっぺを撫でます。
「・・・もう痛くない?」
久間さんの灰緑色の瞳が優しく僕を見つめました。僕は頷きます。最初の頃は痛かったけど、今はもう痛くありません。それに。
「は、ぅ・・・くまさんのおちんちん、きもちぃ・・・」
中でどくどくする久間さんを感じて、うっとりしました。

サークルの皆がお兄ちゃんの部屋に来る度に、僕は久間さんとえっちなことをするようになっていました。お兄ちゃんたちに気づかれないように声を抑えます。

「・・・はぁぁ・・・ひゃ、ぁ、ん」
久間さんの手がおちんちんを擦りました。久間さんに剥かれた僕のおちんちんの先っぽは、ピンク色で敏感です。小さな穴をぱくぱくさせて透明な液体を漏らしています。
「美哉」
久間さんに名前を呼ばれて顔を上げると、ちゅ、とキスをされました。名前を呼ばれると嬉しいです。
「・・・ゅうたろぅさん、」
久間さんにぎゅっとされました。



うとうとしている久間さん。上半身裸の久間さんの筋肉を撫でていると、身じろぎした久間さんのズボンのポケットから携帯が出てきました。ベッドから降りて、床に落ちたそれを拾います。
「久間さん、見てもいい?」
「んー?うん・・・」
久間さんは生返事でしたが、僕は久間さんの携帯を開きます。待ち受け画面には、木陰のベンチに座って眠る僕と着ぐるみの熊さんがいました。善治お兄ちゃんが撮ったのと同じです。
「この写真、どうして、」
久間さんを見上げるとちょっと赤くなっていました。
「それは・・・善治君が写真撮った時に赤外線で・・・」
「・・・僕、熊さんは寝てると思ってたけど、もしかして僕がベンチに来た時からずっと起きてたんですか?」
起き上がって胡座をかいた久間さんが手招きします。僕は膝立ちで久間さんの傍へ行きました。額にキスをされます。
「最初から起きてた。ついでに言えば、風船をあげた時から可愛いと思ってた。・・・こうなるなんて思ってなかったけどね」
好きだよ、と微笑まれて、僕の心臓はきゅんとしました。

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