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アムリタ



子どもを産み落として妻は死んだ。妻に似た美しい子ども。私はその子に清純(きよすみ)と名づけた。

神官と巫女の子が霊力をもつことは理である。清純もまた霊力をもっていたが、その力は神官である私さえも畏怖せしめた。神がかった才能。清純は、年齢にそぐわぬ俊秀さを見せ、また鍛錬を怠ることがない。剣舞一つにしても清純は私や他の神官達の技量をはるかに超えていた。

清純には感情がないように見えた。表情が乏しい。稀に見せる可愛らしくはにかむ様子や痛みに涙を流す様子だけが、清純が異常なのではないかと疑う私を安心させた。

神官になる為に修行する者は神子と呼ばれる。私は七歳の清純に神子修行と称し、神社を覆う森に入り込んだ魑魅魍魎を鎮めさせていた。清純はそれが神子修行の域を超えた神官の行為であることを知らない。

一人の神官が一つの神社を守っている。清純はいずれ神官になると私は思っていた。事もなく昇進し、神職の最高位にまで昇りつめてもおかしくないとさえ。


儀式が、執り行われるまでは。



八歳になる神子は、八月八日に神殿と呼ばれる宗派で一番大きな寺院に集まる。この日に行われる神殿での儀式にて、神子達は神より神獣を授かる。

神に仕える者とその神獣は一蓮托生の関係にあり、片方の死はもう片方の死を意味する。神獣の姿や性格、能力は授かった人間によって様々だった。

同い年の神子が次々神獣と契を結んでいく中、清純の番が来た。清純のことは、他の神社の神官も知っている。注目されていた。私も、才能ある息子の神獣はどんなものだろうかと、期待していた。



清純が神より授かった神獣は、我々の宗派では我執の象徴とされる蛇の姿をしていた。



大きく長い、大蛇と言えるような蛇、その白い鱗には、不気味な黒い紋があった。神獣にあるまじき禍々しい神力を放ち、神殿に侍る全ての神官を金縛りにした。

神獣は人の形をとることができ、儀式ではその姿を見せるのが常とされる。蛇もまた、人の形を見せた。

蛇は、綻びのある古い黒の袴だけを纏った男の姿をしていた。見事な骨格の、引き締まった細身。髪はない。首から背中、腹にかけて、病的なまでに白い皮膚が黒に染まっている。梵字だった。

「我が名は軍濁。字はとぐろ。・・・お前の獣だ」

蛇は軍濁(ぐんだく)と名乗った。清純を血のように紅い瞳で見つめる。手を伸ばし、柔らかな頬を撫でた。跪き、露わな首筋へ顔を寄せる。肌に唇が触れた瞬間、軍濁は姿を消した。清純の白い柔肌に、黒い蛇の紋が這う。左手の甲に、軍濁の身体を染めていた梵字が浮かび上がった。

清純はふらりと床に倒れる。




私は息子の神獣が蛇であることに不吉なものを感じていた。それもただの蛇ではない。禍々しい神力で、神官達に金縛りをかけた蛇だ。ぞくりとする程、美しくもおぞましい、あの蛇。


儀式が終わった後、私を含む上位の神官と清純が神殿に残った。白い装束を脱がされた意識のない清純。小さく白い身体は、巻きつくように這う太く長い蛇の印によって黒く染められていた。その淫猥で邪悪な様に、皆が息をのんだ。神獣が神職者の身体に潜っている間、神職者の身体には印が出る。色は様々だったが、力の強い神獣ほど大きな印となる。神獣としての蛇の力の強さは明らかだった。

禍々しく強大な神獣。口にはしないが、清純を殺そうと考えている者がいてもおかしくなかった。神獣は神が授けたもので、契ってしまった以上は引き離せない。神獣を殺すことは、清純を殺すことを意味する。


「神に、間違いはない」

沈黙の中を最高位の神職者の声が響いた。神に間違いはない。これは神職者の暗黙の了解だった。最高位の神職者が清純の左手をとる。清純の左手の甲を染める、軍濁のものと同じ梵字がある。
「これは梵字、それも種字だ。種字は仏尊を象徴する一音節の真言。この種字がどの仏尊を示すか、わからぬ者はこの中におるまい」
ウンの音となるその種字は、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)を示していた。軍荼利明王は別名を甘露王という。不二の妙薬を施し甘露の雨を降らせ、一切煩悩を清浄に清める明王。
「梵字をもつ神獣など聞いたことがないが・・・悪いものではなかろうよ」

最高位の神職者の計らいによって、私は清純を失わずに済んだ。




神獣は自らの能力をして神職者を助ける。軍濁が姿を現すのは、決まって清純が修行を終えた後だった。


「ひ・・・ぁぁん・・・ぐん、ぐん・・・だめぇ・・・」
軍濁に背後から抱きすくめられて、裸の清純が悶える。軍濁が清純の身体から出ている間、印は消える。修行の後の白い身体には痣や生傷があった。
「ぁ、ぁ、ひぁぁん・・・ぃく、ぃっちゃぁ・・・」
とぐろを巻くが如く清純の身体を拘束する軍濁。清純はひくひくと震えながら身を捩る。小さな性器を軍濁の手が擦り上げている。
「ああ、イっていいぞ・・・」
囁かれ、耳をねぶられて、清純は甘ったるい声をあげ射精した。


八歳の息子が姦淫に耽っているのを、私は黙って見ている。
「もう止しては如何です」
私の神獣が悲しげに言った。清純の様子を見ることができるのは、この神獣のもつ水晶のお陰だった。
「・・・身体に毒で御座います」
軍濁が清純の神獣となってから、私は日に日に痩せていく。自分がこんなに弱いとは思っていなかった。
「神職者とその神獣の関係には、神の他に口を出せる者はいないのですから」
どうすることもできない。いっそあの時殺していたならば、こんな思いはしなくて済んだのだろうか。




軍濁が清純を守護するようになってから清純は目に見えて強くなっていたが、傷も増えていた。神社を守る神聖な森に好んで入ろうとする魑魅魍魎はいない。魔物たちは森の清らかさに身を痛めるからだ。弱いものであれば即座に消滅する。しかし、それでも森に魔物はやってくる。魔物にとって神官の肉と霊力は、何にも勝る馳走なのだという。清純が生まれてから、侵入してくる魔物は多くなっていた。清純の霊力に惹かれて森へ来る。清純が軍濁と契ってからは殊更に魔物を駆り立てているようだった。今の清純は、想像もつかぬほどに美味だろう。




手首をその長い胴で頭上に拘束し、白い蛇は清純の腹の方へと頭を進めた。臍の上を過ぎ、緩く立ち上がった小さな性器に頬擦りするように頭を寄せる。
「ん・・・」
清純は、熱っぽい目で蛇を見ていた。蛇が先端の二股に割れた舌を出す。その長い舌は、とろりと先走りを垂らす清純の性器の孔へと侵入した。
「・・・っ」
みっちりと管を埋める肉が、素早く何度も出入りする。
「ひぁ、ぁぅ、ん、ん、ひ、はぁ・・・ん、ふ」
清純は足をもぞもぞとさせ、尿道への責めに耐えていた。
「ひ、ひぁ・・・っらめ、ら、めぇ・・・ぁぁぁっ、きゃふ、ぅ」
いやいやと首を振り、爪先をぴんと伸ばす。蛇が舌を抜いた瞬間、びゅしっ、と鯨が潮を吹くかのごとく、精液を噴き出した。震える清純の拘束を解き、蛇が胡坐をかいた人の形をとる。腹にかかった清純の精液を指で拭い、舐めた。
「お前の甘露は美味いな・・・清純」
癖になる、と紅い目が細められる。清純は熱に浮かされたように、軍濁に近づいた。
「・・・今日も疲れただろう」
こくりと頷く清純の前で、軍濁は自らの魔羅を取り出す。かさを張る立派なものは、既に勃起していた。清純は軍濁に抱きつく。
「何だ」
軍濁が問う。清純はその耳元で小さく何事かを言った。軍濁は笑んで、清純の尻を撫でる。
「清純が望むなら」


清純の愛らしい唇が、軍濁の魔羅に触れていた。舌を出し、茎をなぞり上げる。
「いい子だ・・・」
とろりと溢れた透明な液を、清純が舐め取った。
「ちゅ、む・・・ふ・・・ん・・・」
うっとりと吸う。
「出してやろう」
軍濁が言った。清純はこくりと頷いて、そのかさを口に含んだ。
「ん、ん・・・」
清純の喉が、それを嚥下する。清純はこの行為が好きなようだった。軍濁のそれは、甘いのだ。


「ぐん、やぁ・・・ぐちゅって、ゃ、ゃ・・・」
清純が抵抗する。軍濁の魔羅が清純の孔を犯していた。
「欲しいと言ったのは清純だ・・・」
「だって、だって・・・ひぅ、ぁはぁぁん・・・」
ずるる、とその醜悪なものが孔から姿を見せる。
「気持ちいいだろう」
「んく、ん・・・」
仰向けにさせた清純に覆い被さる背中。黒い梵字が蝋燭の明かりに照らされて揺らめいた。
「ごりゅごりゅ、らめ・・・はんん・・・でゅぅ・・・っ」
清純の荒い息が聞こえる。射精した後も、清純は腰を振る。
「はぁ、は、ぅ・・・だして、ぐん・・・いじわる、しないで・・・はやくぅ」
ちょうだい、と言った。


おぞましかった。清らかな息子が蹂躙され、毒されていく。しかし、軍濁と清純の性交がただ快楽を求めるだけの行為でないことはわかっていた。私の宗派において蛇は四つの煩悩から成る我執の象徴であるが、蛇はまた、古代より性と生命力の象徴とされている。軍荼利明王は不二の妙薬を施す。軍濁が傷を舐めればその傷はたちまちに癒えた。清純の中に吐き出される軍濁のものが、どのような働きをするかなど明白だった。




「ひぅ・・・く、ふ・・・とうさま、とうさま・・・」
小さな清純が泣いている。清純の手が私の腕に触れていた。辺りには魔物の血肉が飛び散り、私の右腕は自らの血に濡れている。太い血管を切ったせいで出血が酷い。だが、それだけだ。神経や筋は生きている。私は真言を唱え、応急処置の止血を行った。
「父さんは大丈夫だ」
左手で清純の黒い髪を撫でる。ぼろぼろと大粒の涙が、その瞳から溢れた。
「きよすみの、せい・・・」
「いいや、清純は何も悪くない」
でも、と清純は言う。
「きよすみのこと、たべたいって・・・」
清純が生まれてから邪悪で強力な魔物が神社を襲うようになっていた。清純を殺し、その肉を食べ、霊力を奪わんとしている。
「可愛くて美味しそうだからな」
手の甲で清純の涙を拭う。大きな瞳を縁どる長い睫毛を濡らす露。我が息子ながら可憐だと思った。清純が首を振る。何故狙われるのか、幼いながら気づいているようだった。
「とうさま、きよすみが、つよくなります」
袴を掴む小さな手が震えている。私は清純の髪を、再び撫でた。



夢を見た。清純が四歳の時の記憶だった。
「清純は強くなる・・・」
呟く。確か、私はそう言った筈だ。清純は、はにかんだ。はにかんで、頷いた。清純が私に微笑んでくれたのは、それが最後だったのではないだろうか。





最後の魔物が肉塊になる。清純が真言を唱え血振りをした。神剣の身を穢す魔物の血が一滴残らず祓い落とされる。鞘に納める清純。白い肌の上を、黒い蛇の紋がするすると這いまわる。そうして、その全てが清純の影に潜った。影から、軍濁が姿を現す。
「八体も相手にしたのは初めてか」
軍濁がしゃがみ、清純の装束の胸元をはだけさせた。魔物が撃ち込んだ魔弾が、赤紫の膿になっている。
「大きいの八体は、初めて・・・・・・ん」
膿に口をつけた軍濁。一つずつ癒えていった。
「魔弾の毒を吸った。・・・まだ痛いか」
清純が首を振る。軍濁は清純の袴に手を入れた。
「・・・ああ、これは酷い・・・」
軍濁の表情は、どこか恍惚としていた。
「この股の内側の切創は、帰ってから舐めてやろう・・・」
軍濁は清純が酷い怪我を負うほど喜んでいるように見える。そして、清純もまた、怪我を負うことに対して恐れなくなっているように思われた。

「ぐん・・・」
清純が軍濁の毛のない頭部に口づけた。愛おしそうに、頬を寄せる。




異常だ。軍濁と清純の関係は、神獣と神職者の関係から逸脱しているのではないか。何か狂気じみたものを感じ、不安になっている私がいる。

それとも、清純の傍に侍る軍濁に嫉妬し、正常な判断ができなくなっているのだろうか。異常なのは、私の方なのだろうか。




森の一番立派な木を、神木と呼ぶ。月に一度、神社の対角に位置する神木に贄を捧げるのは、神官の勤めだ。ゆっくりと、膚に短刀の刃を入れる。私は真言を唱え、霊力を込めた血を捧げた。

瞬間、私は腹に衝撃を受けた。神木の太い幹に背を打つ。水の塊のような大きな魔物が触手を伸ばし、私を神木に巻きつけ拘束していた。短刀は地に落ちている。太い触手を断ち切ろうと真言を唱えるも、触手はびくともしない。ぐっ、と強く腹を締めつけられ呻いた。私は私の体内の神獣に呼びかける。
「神獣は封じさせて貰った。貴様は人質だ」
「宗洵、様・・・?」
そこに居たのは、あの最高位の神職者だった。
「儀式以来だな」
「何故、貴殿のようなお方が・・・」
否、宗洵(そうじゅん)様の姿を騙った魔物か。私の考えを見抜いたらしい宗洵様が笑った。
「本物だ。さて、甜、枷を外してやろう。・・・貴様が甜に気づかなかったのは、この札がため」
触手の魔物を甜(てん)と呼び、宗洵様が甜に貼りつけらていた札を外した。水のように透明だった甜の中を、血管のような、しかし不気味な紫をした脈が巡る。甜が紫に染まるにつれて、邪悪な気配が立ち込めていった。神聖な森の草木が甜の周りから腐敗し始める。
「清純の能力ならすぐこの邪気に気づく。甜、あの者の口を」
素早く伸びた触手が、私の口を抉じ開けた。





舌を噛み切って自害しようにも、口の中に突き入れられた太い触手がそれを阻んでいる。私の目の前で、清純が甜によって空中で拘束されていた。軍濁も私の神獣と同じように封じられてしまっているのか、出ては来ない。
「ひ、ぁ・・・ゃ・・・」
甜の触手によって、清純の装束が一枚ずつ剥ぎ取られていく。裸に剥かれ、清純は羞恥に頬を染めていた。
「桜色の乳首か、卑猥だな。・・・少し大きいのではないか?」
宗洵様が邪な視線を向ける。触手の先端が清純の乳首を嬲った。
「きゃ、ぅ・・・はぁ、ぁ・・・」
清純の乳首に触れる触手から、たらたらと紫の汁が垂れる。くちゅくちゅと音がしていた。
「ひぁぁっ、ぁ、ふぇ・・・ゃだ、ゃぁ・・・とうさま、みなぃで・・・」
清純がぽろぽろと涙を零す。宗洵様が笑った。
「もう小さな魔羅を勃起させておるな。感じやすい身体よ。・・・そうか清純、お主、軍濁と交わっておろう」
目を見開いた清純に、宗洵様が下卑た笑みを深める。
「蛇が象徴するところは姦淫であり、軍荼利明王は妙薬を施すとなれば、軍濁の能力は想像がつく。・・・ひとつ、いいことを教えてやろうか。お主の父はお主を監視していた筈だ。つまり、お主のいやらしい姿を日頃から見ていた」
背筋が凍った。清純が私を見る。
「とうさま、が・・・?」
「お主の父の神獣の能力、千里眼水晶は神力も感知されぬ程度に僅かに抑え、その痕跡を一切残さないのだ。お主と軍濁とて、気づかずとも無理はない」




触手が清純の身体を擦り回し、粘ついた紫の液体で汚す。性器を揉まれ、乳首を捏ねられ、孔には一番太い触手が這入ろうとしていた。くちゅくちゅと清純の尻の狭間を行き来している。あからさまな嵩こそないものの、その触手は他の触手とは異なる男根の如き管だった。その表面にはいくつもの丸い突起がある。清純はすすり泣いて、孔を狙う触手から逃れようと尻を振っていた。
「らめぇ・・・いぼいぼ、ゃぁの、ゃあの・・・・・・おねがぃ、ゃめて・・・ゃ、ゃ・・・」
いやいやをする清純。触手の先端が、孔の入り口で止まった。
「ゃらぁぁぁぁぁぁん・・・!」
じゅぶぶ、と酷い音を立てて、清純を貫く。清純は前後に激しく腰を振り立て、ぴんと爪先を伸ばして静止した。小刻みに痙攣しながら、性器を震わせてびゅくんびゅくんと白い粘液を吐き出す。
「はふ、はふぅ・・・ぅ、ふ・・・ふぇ・・・・・・ひ、きゃぁん・・・」
性器と乳首を弄っていた触手が、幾筋に裂けて細くなった。擽るように刺激し始める。
「ひぁぁん・・・」
清純が身を捩った。ぼろぼろと大粒の涙を零す。奥まで刺さった太い触手は微動だにしていないにも関わらず、結合部からきちゅ、きちゅ、と音がしていた。
「貴様の息子のなんと淫らなことか。はしたなく甜を締めつけている」
宗洵様が私を見る。喉を突く触手にえずきながら、私はただ清純を見ていることしかできなかった。
「甜、神の森の力からお主を守る私がそろそろ疲れてきた。神獣を二匹抑えるのも骨が折れる。見世物はもうよい」
動く気配のなかった清純の中の触手がぬちゅる、とその醜悪な身を露わにした。孔を再び穿つ。激しい抽挿。清純は身悶え、痙攣を繰り返す。性器は絶えず震え、射精した。
「ぉちんちん、らめ、んく、ふ、いぼいぼおちんちん、きよしゅみに、ぐちゅぐちゅしな、で」
清純が泣きじゃくる。触手が動きを止めた。甜の色が紫から黒に変わっていく。
「ひぅ・・・!なかでどくどく、してゅ・・・ゃだ、ゃ、らめぇ・・・ぁひ、ぁ、ぁん」
自ら腰を振る清純。無謀にも、抜こうとしているらしかった。
「ゃめて、やめ・・・ぐんのしかだめなの、きょしゅみは、ぐんのなの・・・」
甜に哀願する。ぶしっと、不自然な音がした。
「ひぁ、ぁ・・・でてりゅ、いぼぃぼおちんちんから、でてゆ・・・ひく、ん・・・」
触手によって拘束された清純の身体がぐったりとする。清純の腹は少し膨らんでいるように見えた。触手が清純を地面に降ろした。もう興味がないとでも言いたげに、あっさりと離れていく。清純から神職者の命の波動、霊力が、感じられない。

清純同様に拘束を解かれた私は、呆然と立ち尽くす。宗洵様が愉しげに言った。

「甜の毒はあらゆるものを殺す」

清純は死んでいた。




清純の白い皮膚を染める黒い蛇がするすると逃げるようにして消えた。清純の死を確証づける、神獣の消滅。私は、涙が頬を伝うのを感じていた。
「清純の心臓を喰らえば、私はもっと強くなれる」
宗洵様が清純へ歩み寄る。顔を引き攣らせて、ぴたりと不自然に足を止めた。

「・・・何故、という顔をしているな。宗洵様?」

軍濁の声だった。清純の傍に、軍濁が立っている。いつかのように金縛りをかけられているらしく、宗洵様は動かない。
「軍濁!・・・清純は生きているのか!?」
私は叫んでいた。軍濁の能力で、清純は生きているのだろうか。
「いいや。清純は死んでいる。蛇の生命力を知っているか」
捕食せずとも永く生きられる、と軍濁は言う。
「・・・清純を殺してくれた魔物に感謝しよう。これで、我と清純の紲は尚一層強くなるのだ。餞別をくれてやろう」
地面に刺さっていた清純の剣を軍濁が抜き取る。次の瞬間、甜は両断されていた。神速。剣は全く汚れていない。再び剣を地に刺して、軍濁は清純を抱き起した。胡坐をかいた腿の上に向かい合わせにして乗せる。私と宗洵様を尻目に、軍濁は清純に自らの魔羅を埋め込んだ。律動する。軍濁の魔羅が清純の孔から垣間見えた。清純の首に顔を寄せる軍濁の表情は、恍惚。
「っは・・・」
ぶるり、と身体を震わせて、軍濁が息を吐く。
「清純・・・帰って来い」
額、そして鼻を触れ、唇が合わさる。暫くして唇を離した軍濁は、自らの右手の上にどす黒い邪気のようなものを吐き出した。
「・・・ん・・・」
清純がとろりと、瞼を上げた。軍濁が清純の名を呼ぶ。数度の瞬きの後、清純は軍濁を抱き締めた。
「ぐん、きよすみ、よごれちゃ・・・」
嗚咽が聞こえている。
「魔物が出した汚れは、この通り全て抜いた」
右手を見せた。
「・・・宗洵様にも、餞別をくれてやらねばな」
軍濁の紅い目が、宗洵様を見据えた。軍濁の手の上のもの、すなわち甜の毒が、宗洵様に吸い込まれていく。宗洵様は、死んだ。


軍濁を抱き締め、その魔羅を身に埋めたまま、清純は言う。
「父様、清純は、いやらしい子です」
頬を上気させて、腰を揺すった。
「軍濁に、病みつきなの・・・」
軍濁の首筋に、頬擦りする。毒牙にかかった私の息子。軍濁が笑った。清純の顎を取り、唇に口づける。清純が眠りに就き、軍濁は私を見る。
「我は軍荼利明王の神獣の蛇だった。清純が生まれた瞬間、天上の我は清純の魂に惹かれた・・・」
清純から魔羅を抜き、抱き上げた。愛おしげに、抱き締める。
「我は軍荼利明王をこの身に封印し、清純に仕える筈だった神獣を殺した。我から天叢雲剣を剥奪することで、神は我を罰したが」
軍濁の紅い目が、私を見た。

「ただ、それだけのこと」


やはり、狂っていた。狂っている。それでも、私はこの狂気を受け入れるしかない。

神に間違いはないのだから。

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