バスタブ
サラリーマンの危ない一日
1
「典人、典人のお手手は今、吾郎さんを守ってるから、お母さんと繋げないでしょう?ちゃぁんとはぐれないでついてくるのよ?」
70%オフを掲げている衣料品店もあり、デパート内の熱気は異常である。いつも以上に楽しそうな母親に、吾郎さんを両手で抱きしめる小学3年生の文月典人(ふづきのりと)は大きく頷いた。
「いい子!」
満面の笑顔の母親に、典人もふわりと愛らしい笑顔を見せる。
「我が子ながら典ちゃん可愛いわー」
吾郎さんごとぎゅーっと抱きしめられて、典人は楽しげに笑う。
「いざ、出陣よ!」
日曜日の激しく賑わうバーゲン中のデパート。典人は大好きな母親と、ぬいぐるみのクマの吾郎さんと3人でショッピングをしていた。
人混みの中を一生懸命母親についていく典人だが、目の端に一瞬捉えた、吾郎さんと同じシリーズのぬいぐるみが並んでいる光景に、足を止めてしまった。
「ママ、あれ、吾郎さんの子どもの郁男さんで・・・!」
母親に言ったつもりの典人の言葉を聞く人間は誰もいなかった。母親の姿もない。
「・・・ママ?・・・」
典人は激しく行き交う人混みの中で、吾郎さんをぎゅっと抱きしめた。
2
「デパートっつーのは、あれか?迷路か?」
日曜日のデパートにあるまじき機嫌の悪さ。スレンダーで長身、黒髪短髪のサラリーマン、北村勝也(きたむらかつや)は苛々していた。様々な物が集まっている百貨店は便利であるが、それ故に初めて足を踏み入れた不慣れな人間には手厳しいところがある。それも、ゆっくりと見て回るというより、数個の目当ての物が決まっており尚且つ制限時間もあるという人間に、その厳しさは倍のようである。更に、この日曜日の賑わいとなれば。
「ネネちゃんなら兎のぬいぐるみを殴るんだろうが、今の俺ならこいつだろうか・・・」
風船を配っている着ぐるみの兎を凝視する勝也。近視の勝也の異様に近い不機嫌な顔、着ぐるみを着ている自分を見下ろす長身、そしてその禍々しい雰囲気に、兎の中のアルバイトは青ざめた。子どもは勿論寄ってこない。客達に避けられて周りに半径1mの円が発生していた。
「・・・なぁ、」
声を掛けられ、びくっとする。
「現在地と建物の説明が載ってる地図、デパートならあるよな?どこだ?」
「い、一番近いのは・・・ここを真っ直ぐの突き当たり、南の入り口に一つ、あります。トイレと喫煙所の近く、です」
「どうも。・・・普通は入って直ぐの所にあるもんだろ?」
「そうですねッ、入り口5つの内3つにしかなくて・・・申し訳ありませんッ」
頭を下げた兎。不機嫌なまま去っていく勝也をへなへなになりながら見送った。
3
「あれか・・・」
トイレと喫煙所の間に何やら模型のような物と図がある。
「瀬能のとこには酒か?いや、養子取ってから禁酒してるっつってたな・・・。なら、菓子折りか。最近流行りのナントカでいいだろ。直親に当主交代してから気楽で助かるな・・・。あとは・・・」
勝也はぶつぶつと呟きながら人混みを進む。
「・・・ぁ?」
何かとぶつかった。足元で黒髪の子どもが尻餅をついていた。クマのぬいぐるみを抱いている。
「悪いな、ちっこすぎて気づかなかった」
立たせてやろうと、子どもの脇に手を入れて抱き上げた。
「・・・少年、だよな?」
近視故にまじまじと子どもを見つめた。前髪を真っ直ぐに切り揃えた子どもがくりくりの瞳をぱちぱちと瞬きする。
「可愛い日本人形みてぇなツラだな・・・。痛かったか?」
首を横に振る子どもを床に下ろす。しゃがんで、わしゃわしゃと頭を撫でる。
「ならよし。お兄さんは忙しいからな」
立ち上がり、目的地の摸式図へ足を向けた。腕時計を見る。
「残り時間は・・・精々一時間か。まず1階のここだろ?あとは2階のここと、ここだな」
ざっと地図を頭に入れて、更なる目的地へと足を向けた。
「・・・どうした、少年」
足元には、先程の子ども。勝也ははぁ、と溜め息を吐いた。子どもはぎゅっとぬいぐるみを抱きしめて勝也を見上げた。
「っ、ぼく・・・」
「すみません」
怪訝な顔をした中年男性が勝也に声をかけた。模式図を見たいらしい。勝也は退く。周りを見ると、立ち止まる勝也を迷惑そうに見る客も多い。勝也は舌打ちした。
「こっち」
子どもの手を引いて、喫煙所に入った。
4
喫煙所の扉を開けて、中に入る。六畳程のスペースには壁沿いに長めのベンチと煙草の自販機と観葉植物が一つずつという簡素なもので、他に誰もいない。
勝也は少年をベンチに座らせ、自分も隣に座った。
「迷子か?」
頷く子ども。
「ママと、はぐれて・・・」
「名前は?」
「文月典人・・・」
「やっぱ男か」
「?」
不思議そうな顔をした典人に、何でもないと言う勝也。
「つってもな、俺本気で時間ないんだわ。いくらお得意様が大学時代の友人でも、直親忙しいから時間きっちりしか会ってくれない。俺は一社員であっちは大会社社長だからこっちがすっぽかすなんぞ言語道断」
切羽詰まる勝也の表情に、典人は瞳を潤ませた。
「ぅ・・・」
「おい、泣くな泣くな。泣きたいのはこっちだぜ。迷子センターってあるよな・・・確か。ちょっともう一回模式図見てきて、連れてってやるから」
言って、勝也がベンチから立ち上がろうとした。
「ゃっ、ぉいてっちゃ、ゃぁ・・・っ」
離れる温もりに、びっくりしてついにぽろぽろと泣き出す典人。
「~っ・・・泣くなよ・・・つか、時間ねぇだろ、もう」
典人の背中をさすりながら、時計を見る。
「あー・・・取り返しのつかんことになる前にピンチヒッターだな、これは」
携帯電話を取り出して、同僚にかけた。
『どうした、勝也』
「ちょっとごたついて瀬能のとこ時間内に行けなくなった」
『はぁ!?まずいだろ。・・・待て、何の声だ?お前自称独身貴族の癖に子持ちの女に手ぇだしてんのか?』
「出さねぇよ。大体、勤務中に女の所になんか行くわけねぇだろ・・・。後で説明する。今、暇だろ?代わりに行ってくれないか?」
『・・・何持って行けばいい?』
「悪いな」
5
「ついててやれるぞ。だから泣き止め・・・?」
クマの頭を涙で濡らす典人を抱き上げて、膝の上に向かい合わせに座らせる。優しく背中をさすってやる。しかし、典人に泣き止む気配はない。涙の匂いがした。
「抱っこされんのが嫌なのか?ん?」
典人は首を横に振る。
「ちが、の・・・とま、ん、な、ひく、ふ・・・」
苦しそうな嗚咽。
「自分でも止めらんねぇってか。おいおい、どうすりゃいいんだよ・・・」
「ふぇ、ままぁ・・・っぐす、ひ、っく」
「・・・そのママはいつもどうしてくれる?」
「ぅ、ふ、ひっく、ひ・・・ちゅー、は、んくっ・・・いつも、まま、は、ちゅぅしてくれるの・・・」
典人はおでこに当てられる柔らかな母親の唇を思う。しかし勝也は、さっき会ったばかりの見ず知らずの人間に何て難易度の高い要求だ、と一人パニックに陥っていた。
唇だと思い込んでいる。
「・・・わかった、ちゅーだな」
典人の唇を見つめた。桜色のふにふに。ごくっと喉が鳴った。嫌悪感など微塵もない。触れるだけの、啄むようなキスを与えた。ちゅっと音をたてて離れる。典人の嗚咽はぴたりと止まっていた。
「・・・・・・ただのキスだろ?何て顔すんだよ・・・」
とろけたように勝也を見つめる典人。勝也は熱い息を吐いて、典人の涙の跡を舐め上げた。
「・・・ぅ、ふ?」
常識的な一般人に火を点けたことに、幼い典人は気づかない。
6
「ちゅ、ふ・・・ひ、ぁぁん・・・」
下半身を丸出しにされ、シャツをたくしあげられた典人はベンチに足をつけて立ち、勝也とキスをしながら小さな性器と乳首をまさぐられていた。
「気持ちいい?」
愛らしい少年の顔が悦楽にとろけているのを知りながら、尚も質問をするのは、やましさがあるからだと勝也は頭の隅で思う。少年も望んでいると自分に言い聞かせたかった。この行為が法外で、自分と少年にとって百害にしかならないとは、知っている。
「は、ふぁぁあっ!ぉにぃ、しゃ・・・」
かくかくと典人の膝が笑う。くちゅくちゅと典人の先走りを塗り込むように小さな性器を攻め立てた。
「きゃぅん・・・!」
吾郎さんはベンチに横たえられ、典人の手は勝也の胸に置かれている。
「ん、ん、ふ、くちゅぅ」
ちゅぅちゅぅと小さな口を吸われながら、気持ちよさげに典人は小さく腰を揺する。
「はふ、っゃ、ゃぁん・・・ひく、でりゅ、ひゃぁぁ・・・」
腰を震わせて、ぴっぴっと勝也の手の中に精液を吐き出した。
「ひ、ぅ・・・は」
勝也の肩口に顔を埋めて息を吐く典人。勝也は指に絡んだ白濁を典人の白いお尻のすぼまりに塗りつける。
「おし、り・・・?」
典人が勝也に頬擦りをしながら問うた。勝也の指が、ひくんと震えたすぼまりを撫で、侵入する。
7
皺を伸ばしながら、勝也の指が典人のアナルに入っていく。
「ひぁ・・・」
典人がぶるっと震えた。
「ここか?」
「ゃ、ゃ・・・ぁぁんっ」
勝也にしがみつく典人。甘い声が耳をくすぐる。勝也は前を弄ってやりながら、後ろを開いていった。
「ひ、ん・・・」
勝也の首に腕を回して、ひくひくと震える。勝也はかちゃかちゃとベルトを緩めた。チャックを下ろす。すっかり立ち上がった性器が下着の下に潜んでいた。完璧なショタコンか、と苦笑しながら取り出す。
「・・・典人、ゆっくり座って」
小さな耳に吹き込む。ぽーっとしたまま頷く典人は、しゃがむように腰を下ろしていった。
「ひ・・・?」
ぬるりとした熱いものが、お尻のわれめを擦る。穴に触れ、入ろうとしているそれを感じた。
「ぁっ」
くちゅぅ、と先端が押し込まれる。勝也は典人の目尻に涙が浮かんだのを見て、唇を塞ぐ。悲鳴を奪う、計画的なキス。立派な性犯罪者だな、と冷静に思った。
「ふ、ん・・・ん・・・」
口を塞ぐようにキスをしながら、勝也は典人の腰に手を当てて、ゆっくりと性器を挿入していく。
「ん、ん」
ひくひくと腰が揺れた。気持ちよさげな伏し目を確認しながら、キスを深める。
「ん、ふ、ぅ、ちゅ、ん・・・ふぁ」
「は、」
全てをおさめ、唇を離した。唾液がつぅと糸をひく。ねろりと舌で舐め取った。
「・・・辛いか?」
典人の頬にキスをしながら、勝也が問う。典人はひくひくと震えて、うっとりとした表情で勝也を見つめた。
8
「ひぃ、ぁ・・・」
腰を引く。典人の瞳は瞬く間に涙を纏った。勝也は機嫌を取るように唇を合わせた。典人が泣き止む。
「濡れてないからな・・・」
ただでさえ無理やり拡げられ痛いだろうに、潤滑剤さえない。
「キスは好きか?」
耳に吹き込む。典人は勝也の唇をおずおずと見つめて、恥じらうように瞳を伏せた。
「ままのより、すき・・・・・・ひぁあ・・・」
典人が身をよじる。中で膨張した勝也に、うるうると潤んだ涙目の困惑した表情を向けた。
「不覚・・・煽られてどうするよ、俺」
桜色の唇を貪りながら、ゆっくりと小さな穴に性器を擦るように腰を回す。きゅんと締め付ける中にびゅるっと射精した。流し込んだ精液を潤滑剤代わりに、硬度を保ったまま抜き差しする。
「ひぁっ、ぁ、ん」
急に激しくなった動きに、典人はぴくぴくと震えた。
「らめ、らめぇ・・・っ」
「ああ、ここだったか」
ぐりっと擦り上げる。
「ひにゃぁぁっ、ゃぅっ・・・」
出さずにイったらしく、痙攣する典人。
「はぅ・・・」
ぎゅっと勝也にしがみつく。
「気持ちよかった?」
こくりと頷いた。
「ゃら、ゃ、でちゃ・・・ぁ、ぁ、んぅ・・・」
典人は腰を捕まれて、上下する。ぐちゅぅっと湿った柔らかな肉が性器を揉んで、勝也も熱い息を吐いた。
9
典人は吾郎さんを抱いて迷子センターにいた。
「典人!」
大好きな母親の声。
「ママ・・・!」
典人は母親に抱きついた。
「あら・・・吾郎さんの頭の毛がばさばさ」
「・・・いっぱぃ、泣いたから・・・」
瞳を伏せた典人の額に、ごめんねと母は唇をつけた。
「恩に着るわ。今度奢る」
『・・・で、何してたんだ?勝也』
罪を犯してしまったとは言えない。
「・・・いや、まぁ、迷子の子どもがいてな・・・」
勝也は青臭い液を吸ったハンカチを見つめて、煙草を吸った。