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俺の小悪魔



明科大河(あかしなたいが)は帰り支度をする甲野南都(こうのなつ)を見つけて歩み寄った。
「なっちゃん、なーつ、一緒に帰ろう?」
かっこいい顔をへらりと緩ませて南都を見つめる大河。そんな表情でもかっこいいことはかっこいいのだけれど、黙ってきりりとしていた方がもっとかっこいいという事実は変えようもない。
大河は部活のない木曜日、必ず南都を迎えに4組へ来る。南都のクラスメートは、またかと思いながら、今日の小悪魔ちゃんの反応はいかにと、二人を遠巻きに見つめている。
「ん・・・帰る」
静かな南都の声。
「なっちゃん、可愛いっ」
どこか冷めた雰囲気の南都を、大河はほお擦りしそうな勢いで抱きしめた。
「大河、僕から離れないと、嫌いになるよ?」
クラスメートがやはりと思う、予想通りであり、いつも通りの南都の反応。少し不憫だ。
一部の女子生徒は南都を嫌っていた。自分だったら大河をもっと大事にするのにと思っている。当の大河は南都しか見えていないため、つけ入る隙はなく、それで尚更彼女達の羨望は南都に向かった。南都は大河が傍にいないとき、度々女子生徒のいじめを受けた。悪質で陰湿なそれは南都の見える部分には何の痕も残さない。




高校に入学してすぐに大河は南都に一目惚れした。いつだって南都を見ていたいと思った。可愛いと思えば可愛いと、好きだと思えば好きだと口にしていた。大河は無意識だった。南都に出会う前まで、大河は無表情で考えていることがわからないとさえ言われていた。それは、大河を動かすものがなかったからだ。どんなものも、大河の中では取るに足りなかった。そんな大河を、南都は動かす。


一緒に下校する。いつものように、大河は南都を部屋に入れた。
「南都・・・」
低く甘い声で名を呼ぶと、南都はぴくんと震えた。
「ん・・・ぇっち、するの?」
大河は南都の制服のズボンを落とす。生白く少しむちりとした足があらわになった。南都の身体は小柄で華奢、小さな顔には可愛らしいくりくりの瞳と桃色の唇。誰もが認める愛らしい顔がうっすらと朱に染まる。南都は大河を見つめた。普段の貞淑さに変わりはないが、表情は明らかに大河に陶酔し切った、普段は見せない甘いもの。南都は、快感に弱い。柔らかなベッドに押し倒してふとももを撫でるとひくんと震える。
「たいが、して・・・ぃっぱい、あいして・・・」
大河の首にたおやかに腕が絡む。
「南都、可愛い・・・」
どんな南都も可愛いし、愛せると自負している大河だが、情事中の普段は出さない甘えを見せる南都には毎回感動する。征服欲を煽られ、欲情は高ぶり、いつも南都を激しく犯した。




南都が初めて大河を知ったのは、大河が南都を知るよりも少し前だった。中学から弓道で有名だった大河は入学するよりも早く、高校の道場に来て弓道部員と練習していた。新入生代表として入学式の式辞を述べるように学校に頼まれた南都は打ち合わせに来た日、大河を見た。凛々しく真剣な表情で弓を放つ大河に南都が好感を持ったのは間違いなかった。入学した後、南都の明科大河は冷静で寡黙そうだというイメージは崩壊した。南都への、びっくりする程のスキンシップと甘い言葉の応酬。そんな大河が南都を幸せにするが、冷めた性格の殻を脱ぐ勇気がない南都はつれない態度を取ってしまう。
ただ、セックスでは違った。南都は素直になれた。快感に弱い南都はすぐに我を忘れてしまう。普段の南都を制御する羞恥やプライドは二の次になり、深層心理にある大河への甘えが溢れ出た。


積極的に舌を絡めて、大河を味わう。唇が離れる時いやらしく糸を引いた。丸見えのアナルを指がぐちょぐちょと解す。
「ぁあっ、ん、あぁん・・・んく、ん、たぃが、も・・・おちんち、いれて・・・」
南都はぎゅっと自分の足を抱えて、少しお尻を上げる。ひくんと菊門が収縮した。大河の指を締めていた力を抜く。甘えた表情。大河は南都の鎖骨の下に吸いつきながら、熱く張った性器をアナルに宛がった。




「ぁ、ん・・・ぁ、あっ、ん、ひぅ・・・」
くちゅくちゅと水音。南都は大河に跨がって腰を振る。先程中に放たれた大河の精液が掻き混ぜられて泡立ち、南都から流れ出た。南都の動きに合わせて揺れる幼い性器が可愛くて、大河は人差し指で悪戯する。先走りの溢れる窪みを撫でて、裏筋を優しくなぞった。
「ひぁぁ・・・っ」
南都がぴくんと震える。つぅと少し乳白色の液が垂れた。
「南都・・・可愛い」
「ゃ、ぁ、ぃっちゃぅ、でりゅ・・・」
はぁはぁと大河の与える性器への愛撫に息を切らす南都。両手で隠すように激しく擦りたて始める。クッションに預けていた上体を起こして、大河は南都に囁いた。
「イかせてあげるから、隠さないで。ちゃんと南都のいやらしいところ、見せて」
小柄な南都の脇に手を入れて、ずちゅと腰を打ち込む。
「ひにゃぁんっ、ぁぁっ、ん、んぅ、たぃが、みてぇ・・・」
南都はいじっていた性器を大河に見せるように突き出した。
「ん、ぁ、ぁ、なちゅの、いやらし、の、でゆ・・・んく、ひぁぁあぁっ、ぁ、ぁ、ぅ・・・」
ぴゅぅぴゅぅと、とろとろの白濁を噴き出す性器。
「はっ、南都・・・」
大河も遅れて中に放った。




「本当に気に入らないの」
女子生徒が南都に向かって、吐き捨てるように言った。放課後、大河の親衛隊が資料室への南都を呼び出すのは、一度や二度ではない。既に恒例化している。南都は女子生徒に囲まれて、俯いていた。なるべく刺激せずに、早く帰りたい。
「どうして大河さまはこんなつまんないのが好きなのかしらね」
がっと顔を上げられる。南都の表情は変わらないが、心はずきりと傷んだ。自分でも、わからないから。
「顔は一級品よね」
「身体も、白くて綺麗」
一人が南都の手に触れる。
「でも中身はどう?」
女子生徒達は口々に可愛いくないと言う。
「昨日なんて大河さまに向かって嫌いになるよ?なんて言ってたし」
「有り得ない」
「嫌われるのはどっち?」
くすくすと笑う音。南都はかぁっと頬を染めた。その通りだと思う。でも、甘えるなんてできそうにない。羞恥に打ち勝つことは不可能に思えた。
「やっぱり、床上手なんじゃない?」
「やだ、はしたない」
「でもきっとそうよねぇ」
それしかないと女子生徒達は口を揃えた。
「もしかしたら、大河さまのことを知り尽くしてるかも」
はしゃぐような声。
「知り尽くしてるって?」
「どこが弱いかとか」
不意に女子生徒の中で、一人の声が響いた。
「でも、この子、大河さまのことを私達よりも知らないんじゃない?」
ざわついた。
「無関心そうだもの。大河さまがいつも何を食べているかなんかは、私達よりも知っていると思う。お昼も一緒に食べてるみたいだし。でも、じゃあ、たとえば、大河さまが1番大切にしているものとか」
あなた知ってる?と女子生徒は南都を見つめた。




女子生徒は繰り返した。
「ねぇ、大河さまが1番大切にしてるもの、何か知ってる?」
南都は首を振る。想像もつかなかった。
「先祖代々受け継いできた弓よ。大河さまファンなら常識。弓道の雑誌に取り上げられた時に答えてた。あなた、大河さまの恋人としての努力が足りないんじゃない?」
南都はじわりと涙が溢れそうになるのを堪えた。努力。確かに努力はしていないと思う。大河のために自分ができることとは何なのかなんて、考えたこともなかった。

「努力なんかしなくていいから」
大河の声。女子生徒が一斉に後ろを見た。扉の隣の壁にもたれて腕を組む制服姿の大河がいた。
「大河さま・・・っ、いつから」
「初めから」
女子生徒は顔を青くする。
「甲野君が悪いのよ!大河さまの恋人として相応しくないから!」
生徒が自暴自棄に言う。大河はやんわりと正論を述べた。
「相応しいかどうかなんて他人が判断することじゃない」
それからと続ける。
「先祖代々受け継いで来た弓は確かに大切だが、1番というのは弓道誌へのリップサービスに過ぎない。そんなものは、壊れたら壊れた時。泣きもしないさ」
大河は女子生徒達を見た。
「俺にとって1番大切なのは、南都だ」




女子生徒達は気まずそうに俯いて、逃げるように準備室から出て行った。南都の瞳からぽろぽろと涙が零れる。
「南都・・・」
大河は南都を抱きしめた。
「ごめ・・・ひく・・・ん、ふぇっ・・・」
「何が?南都は今のままでいい。努力なんて必要ない」
大河はしっかりと南都の耳に言葉を吹き込む。
「雑誌だとかそんなのはどうでもいい。あんなの本当のことも答えてもないから。南都は、俺の傍にいて。どうしようもなく南都が好きなんだ。いつだって抱きしめていたいし、繋がっていたい。そんな俺の過剰で非常識なスキンシップに合わせる必要なんかないから。南都は南都のままでいて・・・」
ちゅっちゅっと顔中にキスが降る。
「・・・ん」
頷いた南都の頬の涙の跡をぺろりと舌が這う。
「・・・たいがは、ぼくの、どこが好きなの?」
南都は真剣だった。それさえわかれば、それさえ自分の中に持ち続ければ、大河に好きでいてもらえる。
「全部」
ギャップを知る前から盲目に好きだったし、冷めた態度が軟化したって好きで居続けるだろう。
「なっちゃんが、別の人間を好きになったり、本気で俺を拒絶したら、死んじゃうかも知れない」
脅しだけど本当と弱い声で言う。南都は切ない気持ちになった。
「ならない・・・たいがが、ぼくを、愛してくれるなら」
やっぱり小悪魔だと大河が笑った。


おまけ

「大河、部活は?」
「副部長には遅れるって伝えたから大丈夫」
南都を抱きしめたまま俺は動かずにいる。南都を学校で抱きしめていられるのは珍しい。人目がないのは重要らしく、準備室はなかなかいい場所だと知る。
「・・・大河、今日、部活の練習、見に行ってもいい?」
南都が言う。俺は二つ返事で許可した。

「僕にできる努力、考えてみたんだけど、頑張ったら床上手になれるかな」
鼻血が出そうになった。あの甘えっぷりにテクニックを加えられたら。
「大河?」
小首を傾げて見せる南都。俺の恋人は、学校中が認める小悪魔。

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