バスタブ
学校の悪魔
1
「黒滝はまたサボりか?」
担任の先生の言葉に、教室中の人が肯定の視線を向けました。そうか、と先生は僕の隣の机から視線を外します。いつものことながら、HRが始まっても黒滝隼人(くろたきはやと)君は教室にいません。しっかり鞄がかけられた机は、彼が登校したことを示していますが、肝心の本人はきっと屋上です。
黒滝君は僕の通う高校の有名人です。艶やかな黒髪と冷ややかな美しい顔立ち、すらりとした長身。モデルのようなルックスだけでなく、黒滝君は頭脳も明晰で校内はもちろん、県下でも上位の成績保持者です。ただ、日常の態度は最低で、授業もろくに受けません。晴れた日は決まって屋上で眠っているのを、僕だけが知っています。
僕、櫻井蓮(さくらいれん)は前髪と眼鏡で顔を隠すちびです。高校生だというのに、身長は160センチあるかないか。太らない体質で、全体的に痩せていますがふとももだけややむっちりなのが大きなコンプレックス。肌の色も白くて、黒滝君の肌が美しい白なら、僕の肌は軟弱な白です。
そんな僕に、友達はいません。空気になることに徹しているのと、皆勉強が大変なのとで、ありがたいことに僕をいじめる人もいません。
ただ一人、黒滝君を除いては。
2
放課後、僕は一人で教室に残り、黒滝君を待ちます。彼は今日、結局どの授業も受けていません。
「レン」
甘い低音。僕の名を呼んだ黒滝君は大きく前を開けた学ラン姿で入口に立っていました。涼しげな目元に見つめられて、ただでさえ人の視線が苦手な僕は縮こまってしまいます。つかつかと僕に歩み寄った黒滝君は、僕の前髪を払って、さっと分けます。
「今日も誰にも見せてねぇよな?」
「・・・ぅ」
頷きます。どきどきどきどき。顔が近くて恥ずかしいです。黒滝君の顔は綺麗に整っています。学校一の美女の夏目さんも黒滝君に一目惚れしたそうです。誰もが気にしている存在の黒滝君。彼は僕の気持ち悪い顔がお気に入りみたいなのです。
「こんなの、見せられるわけない・・・」
唇を噛んだ僕に黒滝君は眉をひそめましたが、何も言わずに僕にキスしました。
「見せてないならいい」
ああ、またはじまると僕は期待するような、胸を締めつけられるような気持ちになります。
放課後、ほとんど毎日、黒滝君は僕にいやらしいことをするのです。僕はこの行為が、本来なら男女の間で行われる受精のための行為だと知っています。愛し合うものでなければ、ただの快楽と背徳の遊びだということも。多分、僕が嫌がって黒滝君を訴えたなら、黒滝君は罪人になるのです。でも、僕はそうしません。黒滝君は僕を便器だと思っているに違いありませんが、そんな黒滝君でも僕は好きなのです。
初めは「性的ないじめ」だと苦痛を感じていた僕は、いつの間にか黒滝君とのその行為を待ち望むようになっていました。
3
「ふひゃぁあぁ・・・ぁっ、ぁ」
机に仰向けになってお尻に黒滝君のペニスを入れてる僕。黒滝君は僕の、擦られると頭が真っ白になるところばかりを責めます。僕は気持ちよくて自分のお腹をぬるぬるにしています。
「くろたきくん・・・ふっきん、あたって・・・ぁあん」
僕のペニスは黒滝君の腹筋と僕のお腹に挟まれて、刺激されました。
「こしゅらないで・・・あひぁあぁ、ん、ゃぁあぁんっ」
ぴゅぴゅと精液を出します。
「くっ、レン・・・っ」
黒滝君も中で吐精します。熱い汁が壁にかかりました。
「はぁあん・・・」
身体がひくひくして重くなります。黒滝君がずるりとペニスを引き抜きました。
「ぁ・・・んンっ」
僕のお尻は栓をなくしてくぱくぱします。僕のペニスはたったまま。
「淫乱。自分で扱いて見せな」
黒滝君は唇の端をあげました。
「いやぁ・・・」
首を振った僕の手をとって、黒滝君は僕の手にペニスを握らせます。
「ひぁ」
「扱けよ」
睨みつける目に怯えて、僕はゆっくり扱きはじめました。
「ん、ん・・・やぁ、や、みないで・・・しごくからぁっ、みちゃ、いやぁ」
視線を意識して、体中がピンクに染まった気がしました。
「舐めてやろうか?」
黒滝君が舌を出しました。僕はペニスをとろとろ熱い口内に包まれるのを想像してしまいます。
「ひゃっ、やらぁあんっ」
それだけで、僕はびゅくびゅくと白濁をほとばしらせました。
「みないで、みなぃでぇ・・・」
ぼろぼろ零れる涙を、黒滝君の熱い舌が舐めとりました。
4
登校すると、教室中がざわめいていました。僕が教室に入ると皆が一斉に僕を見つめて、しんと静まり返りました。
「なに・・・?」
黒板に僕と黒滝君がセックスしている昨日の写真が貼られていて、僕は長い前髪の下で顔を真っ赤にしました。教室でそんなことをして、今まで見つからなかったのが奇跡だったのです。大きく、悪魔と奴隷と書かれています。でも、どうして僕だとわかったのでしょうか。写真の僕は顔を隠していないのに。白いチョークで書かれた文字を見て、納得しました。写真の黒滝君につけられた吹き出しは、レン。学校にレンは僕一人です。よく考えると、当たり前のことですが、セックスを見られていたのです。恥ずかしさで死にそうになりました。
「櫻井君、髪上げて?」
夏目さんの、凛とした声が静かな教室に響きました。後ずさった僕を、二人のクラスメートが掴みました。
「やめて・・・」
逃げられるわけがなくて、僕の前髪は夏目さんに分けられてしまいました。邪魔だとばかりに眼鏡も取られて、聞こえたのは皆が息を呑む音。醜悪な僕の顔に皆がびっくりしているのでしょう。夏目さんの見開かれた瞳。美人は驚いても美人です。情けなくて泣きそうになりました。
「男のくせに・・・っ!」
夏目さんの顔が怒りに歪みました。クラスメートは皆、僕から目を逸らしていました。ああ、やはり僕は醜いのです。見ていられないほどに。
がらりとドアが開かれて、現れたのは黒滝君でした。
「・・・てめぇら、何してんだ?」
5
つかつかと近づいた黒滝君は、僕を掴んでいるクラスメートを蹴り上げて、僕を抱き寄せました。黒板を鼻で笑います。
「はっ、これ書いた奴、よくわかってんじゃねぇか。こいつは俺の奴隷だぜ?触るんじゃねぇ」
黒滝君が獣のように瞳をぎらつかせました。
「ぃゃぁっ、くろたきくん、こんなの、や・・・っ」
椅子に座った黒滝君にしがみつく形で、僕は犯されます。耳元で黒滝君が小声で言いました。
「隼人って呼びな。クラス公認でレンは俺のもんだぜ?」
楽しげな瞳。ほらと促されて、僕は小さく呟きます。
「・・・はやと・・・・・・」
「いいぜ・・・すげぇそそる。この状況も、レンを見せるのは勿体ねぇが、なかなかだな」
黒滝君の座席は比較的真ん中の席で、僕は後ろの席の男子とばっちり目が合います。彼は食い入るような目で僕を見ていて、僕は黒滝君の首に顔を埋めました。
「やぁ・・・」
先生も来ていない時間。進学校だから、授業が始まるにはまだまだ時間があるのに、ほとんどの生徒が登校しています。教室に響く卑猥な水音。
「ひぁあぅ・・・はゃと、はやとっ・・・も、やめ・・・ん」
口の中に黒滝君の舌が入って、くちゅくちゅと舐めまわされました。
「ふ、ぁ、ちゅ、ん、はふっ」
ペニスをいじられて、身体が痙攣します。
「だめ、ぁ、んン、ゃあぁ・・・」
隣の席の女子がごくりと唾を飲む音が耳を刺激しました。
「やら、や、でりゅぅっ」
きゅと黒滝君にしがみついて、射精していました。黒滝君も僕の顔にキスしながら僕のお尻の中にかけます。
「レン、悪魔の奴隷は嫌か?」
首を振る僕がいました。
あれから僕に近づく人はやっぱり誰もいません。黒滝君は教室にいるようになりました。欠伸ばかりですが。
悪魔の奴隷は、僕だけです。