バスタブ
抱きしめてキスをする
1
「社長、本日の職務はこれで全てと存じます」
「そうか」
スーツをぴしりと身に纏い、理知的な眼鏡をかけた男は、その美貌を冷たい無表情で覆ったまま、席を立った。瀬能直親(せのうなおちか)は25歳にして大手貿易会社の社長である。瀬能には長く重い社史があり、代々瀬能の嫡男が社長を負った。そして、直親は若くして既に、過去のどの人物よりも有能だと謳われている。
会社の特別駐車場。息抜きにと吸っていた煙草を揉み消した。瀬能の人間に相応しいものをと、祖父が選んだ漆黒の外車のドアに手をかける。
「ひく、ぅ・・・ふっ・・・」
直親は泣き声を、聞いた。辺りを見回す。幼い少年が歩いてくる。服の袖で涙を拭いながらふらふらとしているが、よく見れば近くの有名私立小学校の制服。時刻は7時過ぎ。小学生が外を一人でうろつくのには危ない時間。前をしっかり見ていない少年は直親にぶつかった。
「・・・ぁっ・・・ごめ、なさぃ」
少年が顔をあげた。涙でかぶれて、赤い目元。潤んだ瞳が直親を見た。二人を沈黙が包む。少年は不意に意を決したような表情をした。
「ぼくを、たすけて・・・」
ぽろぽろと大粒の涙が白い肌を滑り落ちる。助けてなどという大袈裟な言葉に違和感を感じながら、直親はしゃがみ込んで目線を合わせた。
「どうした」
2
少年の名前は楪刹那(ゆずりせつな)という。うすく茶色がかった髪と大きな瞳、白い肌。人形のような綺麗な顔も、暗い表情のせいでぱっとしない。小学校から帰った刹那は玄関の父の靴にどん底に突き落とされた気持ちになった。
「お帰り、刹那」
にこにこと貼りつけたような笑顔で、父の篤浩が言った。地元では爽やかで親切な若々しい巡査部長の刹那の父。刹那の手を乱暴に取って、リビングへ連れていくと四つん這いにさせた。
「早く灰皿を出せ」
篤浩の綺麗な笑顔に刹那は震えた。ズボンを下げる。あらわになった白く柔らかなお尻には赤い小さな肉の盛り上がりや痣がある。篤浩はくわえていた煙草をじゅっと刹那のお尻に押しつけた。
「ぃ、ふ・・・っ」
ぶるぶると震えて床に縮こまる刹那。篤浩は服の上から身体をおもむろに殴り出した。
「あ、う・・・っい」
小さな身体は堪えていた。酒を飲んでも、狡猾な篤浩が服に隠れない部分の皮膚に傷を作ることはない。そしてまた、篤浩は刹那が自分の元から離れられるわけがないと決めつけていた。眠った篤浩。刹那は啜り泣きながら逃げ出した。
ふらふらと、さ迷う。逃げ出すことは今まで何度も考えていた。一度、警察署に行ったが父の肩書と普段の様子に相手にしてもらえなかった。警察ですらだめなのに、一体誰に頼ればいいのか。あてのない、考えなしの行動だとはわかっていた。あの家の他に、自分の居場所はどこにもない。だけど、限界だった。ひたすら、どこか遠くに行きたい。
「・・・ぁっ」
刹那は直親にぶつかった。清潔感のある洗練された雰囲気。
「・・・ごめ、なさぃ」
男性には恐怖しか抱けない。刹那は身構えた。しかし、視線が絡むも不思議と恐怖を感じない。自分に、驚いた。
3
刹那の言った「たすけて」の深刻さを直親が理解するのに、時間はかからなかった。
「警察署へは行ったのか?」
刹那は頷く。でもと続けた。
「お父さんが、警察官で、言っても、だめで・・・」
刹那は緊張に声を上擦らせるが、大人の男に感じるいつもの恐怖を直親からは感じていない。それどころか、なんだか甘い疼きすら感じていた。
「・・・ならば、俺の知り合いの警察に動いてもらおう。・・・俺は瀬能直親だ。君は」
「・・・ゆずり、ゅずりせつな・・・」
刹那が鳴咽混じりに名を名乗る。
「君を父親から解放し、犯罪者に罪を償わせる。異論がないなら後部座席に乗りなさい」
直親はいつもならば冷静に切り捨てるのだがと、心の中で苦笑していた。虐待されていたと言う子ども。直親は考える。他の会社の人間の罠だったとしたら?自分の立場を考慮すれば、真実を言っているのか確証のない子どもを家に入れるのは賢い判断ではない。誘拐犯に仕立て上げられてもおかしくない状況に自ら飛び込むなど、ただの馬鹿。それでもと直親は思う。この少年を放っておけない。強く思った。
刹那が、車に乗る。
刹那を車に乗せてからの直親の行動は早かった。知り合いの警察に連絡を取ってから、告訴。手際よく、それこそ機械的に処理する直親に刹那が呆気に取られていた。
「楪巡査はできた人間で有名です。俺もまさかでした」
直親の大学時代の友人である刑事、結木が言う。
「2年前に奥さんと別居した時から、刹那君に身体的及び心理的虐待を行ってきたなんて」
結木は、最低ですと唇を噛んだ。
4
刹那の父は逮捕された。警察からの要請に刹那の母親は関わりたくないの一点張りだった。無理に刹那を預けるのもいかがなものかということで、警察が預かることになったのだが。
「刹那君は私達が責任を持って保護します」
歩み寄った結木に刹那は怯えを見せた。
「ぃや・・・」
ぎゅっと直親の足にしがみつく。
「・・・僕、お父さんに似てるんでしょうか。・・・えっと、じゃあ、小杉」
後ろで書類を見ていた部下を呼ぶ。
「あ、はい、刹那君、警察は安全ですから」
「こなぃで、きちゃ、やです・・・おとこのひと、こわ・・・」
顔を直親のズボンに押しつけた。震えている。
直親はソファーに座り裁判の書類に目を通す。
『では、匿う上に、その子の裁判等も親権者がわりに関わるのですか?』
「ああ、駄目か?」
『・・・社長が決めたことなら私に異存はありません。日程は調節致します。が、いかんせん・・・』
「話題性十分だな」
電話の向こうで困惑している秘書が容易に想像できて直親は笑う。
『ない方がよろしい話題性です・・・』
電話を切った直親を見る。隣に座っていた刹那は、電話をする直親の話を黙って聞きながら自分のしたことに罪悪感を感じていた。
「ごめんなさい、ぼく・・・あなたの生活をおかしく」
むにっと直親の指が刹那の頬を突いた。
「君が心配するようなことは何一つ、起こってはいない」
ふと微笑んだ直親に、刹那は胸を震わせる。
5
お風呂から出た刹那は身体に合わない大きな衣類に悪戦苦闘していた。ズボンが落ちる。仕方がないので膝まであるシャツだけを着て直親の元へ行った。若干、顔をしかめた直親に、刹那はシャツをぎゅっと握った。
「ごめんなさい・・・ズボンが、どうしても落ちて・・・」
傷痕を隠しているつもりの刹那だが、直親には恥じらっているように見える。
電話を取って、物資の調達を結木に頼んだ。
『今日はもう無理なので、明日朝一で届けさせるよ』
「ああ、頼む」
手招きで刹那を呼ぶ。
「俺の家に寝具は一つしかない。一緒でいいか?」
刹那が頷く。電気を消してしばらくすると小さく押し殺した、泣く声。直親は黙って、震える身体を抱きしめた。
「ふぇ・・・っ、ごめ、なさ・・・」
強張る小さな身体に囁いた。
「泣けばいい。そんなことより、すぐに謝るのは感心しない。癖になる」
「・・・んくっ、ふ・・・はぃ、ぁりがとぅござぃます・・・」
ぽろぽろと涙を流す。
「いい子だ」
直親が刹那の額に前髪の上からキスをした。
「・・・っ」
涙が引っ込んだ。胸がきゅんと締めつけられる。直親の何気ない行動に、刹那はときめいた。
次の日、警察が直親の元に刹那の衣類や保険証を持ってきた。直親は刹那に学校を休ませて病院へ連れていく。
「それにしても刹那君は、随分僕を避けますね・・・」
傷ついた顔の医師に、男性恐怖症だと思うのだがと直親が逆に問えば。
「なるほど、恐怖症ですか。人間の心ほど複雑なものはないので、同世代の子どもとあなたにだけは恐怖は感じないということも有り得るでしょう」
塗り薬を処方してもらい、直親と刹那は病院を後にした。
6
裁判が進む中で、刹那の引き取り手がいないことが明らかになるのはすぐだった。
「定例でいけば、もちろん刹那君のお母さんが引き取るのですが、なんでも、恋人がいて刹那君が邪魔らしいんですよね・・・。2年の別居中、親子なのに一度も会ってないと聞きます。裁判にも一度も来ませんし・・・」
かわいそうだと結木は言う。
「抱っこして下さぃ・・・」
頬を染めて、ベッドに潜った刹那が言う。直親は刹那の甘えたを親の愛がないからだと考えていた。父親になった気分がする。
「おいで」
抱きしめて、電気を消した。
「お母さんについて聞かせてくれるか?」
戸惑う気配の後、刹那が頷いた。
「お父さんとお母さんは、お見合いで結婚して、お母さんには、初めから、別の男の人がいたみたいです。別居する前から、あまり家にはいませんでした。お母さんはお父さんみたいに僕を殴ったりはしません。でも、僕の存在は必要なくて」
僕は生まれて来ちゃいけなかった、と泣きそうな声が聞こえた。
「俺の息子になるか?」
刹那は直親を見上げた。暗くて、よく見えない。
それから2日後、マスコミを排除して、家庭裁判所にて直親は刹那を養子にした。刹那の母親は喜々として応じた。
7
養子縁組が成立して、刹那は直親と暮らすようになった。小学校は変わらない。父親と住んでいた家よりも直親の家は小学校に近く、刹那は歩いて学校ヘ通う。刹那の苗字は瀬能に変わり、自分も瀬能なのに直親を瀬能さんと呼ぶのは違和感があり、名前で呼ぶようになった。
金遣いの荒かった父親とは対照的に、直親は無駄がない。仕事も料理も完璧で、余裕がある。直親を知れば知るほど、刹那は直親を慕う気持ちを大きくした。同時に、自分のような人間がこのようなところにいてもいいのかと、申し訳ないような気持ちになる。
リビングでソファーに座りゆったりしている今だって、煙草に火をつけた直親を見て刹那が怯えたのを敏感に覚り、水の入った灰皿に押しつけて消した。
「怖がらせたな」
「ぁ・・・ぼく・・・あっちへ行きます・・・っだから、吸って下さ」
部屋を出ようとした刹那の腕を掴む。
「刹那が嫌がるなら、もう煙草は吸わない。酒も止めよう」
直親は一本のふやけた煙草が乗った灰皿をごみ箱に捨てた。
「そんな・・・ぼくには、そんなかち、ないです」
泣きそうに見つめてきた刹那を、直親は抱きしめた。
「・・・本気で言っているのか?煙草や酒に、刹那よりも高い価値などあるわけがない」
直親の本気の言葉に、刹那の心は柔らかく揉まれる。氷を溶かすように温められる心が、刹那の瞳に涙を湧かせた。
8
真夜中、きぃと音がして、ベッドに横になりテーブルランプの明かりで他社の宣伝書類を眺めていた直親は、扉に視線を向けた。
「刹那・・・。また怖い夢を見たのか」
刹那が直親の家に来た日に、刹那には部屋が与えられたが、よく刹那は悪夢にうなされて夜中に目を覚まし、寝付けなくなる。
「ふ、おと、さん・・・おこってた、けいむしょにいれやがってって、ひくっ、もうでてきたから、ん、おまえを、ころすって・・・ふく、んっ・・・」
刹那は罪の意識に苛まれている。直親は刹那をベッドに入れて、抱きしめながら背中をさする。
「刹那はもうお父さんに会うことはない。俺が、会わせない」
小さな声で直親を呼んだ刹那はすぅっと眠りに就いた。
「それでちょくちょく一緒に寝ているが、9歳の子どもに対して甘やかしになるだろうか」
「・・・甘やかしとは少し違うのではないでしょうか。虐待の傷も、曲がりなりにも自ら親を突き放した事実が子どもの心に落とす暗い影は相当の重さと存じ上げます。・・・第一に、社長は眠れない刹那君を放ってはおけないと思われますが」
帰り際のすっかり父親の風体をしている直親の問いに、秘書は静かに意見した。
「それもそうだな。・・・ところで、来月7日の午後の予定はどうなっている?」
手帳を開く。
「はい、まだ確実に決定とは言えませんが、予定ではデスクワークです。10日までに目を通して頂きたい書類が届きますので。何かご予定でも?」
刹那の授業参観があると言った直親に秘書は沈黙した。
「・・・ちなみに、社長が今日仕事を早く切り上げられたのは・・・」
「刹那の誕生日だからだ」
当然とばかりに言い切った直親に、秘書の中の他人に無関心という直親のイメージは崩れ去った。
9
プレゼントを何にするかは、随分前から考えていたが望遠鏡かテディベアかで迷っていた。賢い刹那だから、望遠鏡も喜ぶだろう。可愛いものが大好きというわけでもないが、テディベアを抱いて喜ぶ姿も、容易に想像できる。
結局、テディベアを抱く想像上の刹那の可愛さにやられ、1番愛らしい顔をした、抱くのに調度いい大きさのテディベアをレジへ持って行った。テディベアを抱く刹那を想像してから、直親の表情は優しく緩んでいる。擦れ違う人々が赤面した。
「プレゼントに包装して欲しい」
レジの女性も赤面。
「は、8000円です・・・っ」
腕を奮おうと食材を買い揃える。直親はケーキも作るつもりだ。
今朝、直親に帰宅後のキッチンとダイニングへの立ち入りを禁止された刹那は、学校から帰ると自室に入った。誕生日を祝ってもらったことなどほとんどないため、直親が言った床のワックスを塗り変えているから立ち入り禁止だという嘘をすっかり信じ込んでいる。
テーブルに並んだいつにも増して豪勢で美しい一級品の料理と、直親からのプレゼントに、刹那は喜んで、直親に抱き着いて甘えた。テディベアを抱いて、はにかむように微笑む様子は、それこそ直親の想像そのままで、可憐だった。
「生まれて来てくれてありがとう」
直親は、テディベアごと刹那を抱きしめて頬にキスをした。
10
直親に貰ったテディベアは刹那の宝物になった。毎晩抱いて眠る。テディベアを抱きしめて、刹那は何度も直親の名を呼ぶ。
「なおちかさん・・・」
糸で縫われているテディベアの口に柔らかな唇を合わせては、優しく健全に自分を大切にしてくれている直親への背徳感と、報われない恋慕の情の切なさに胸が苦しくなった。唇にキス。それは夢のまた夢に思われる。
風呂から上がってソファーに座る直親は、いつものように膝の上に向かい合うように刹那をのせて、濡れた髪を拭いてやった。拭き終わったが、動かない刹那に訝しんで声をかける。
「刹那」
刹那はのびあがって、ちゅと直親の唇を奪った。ぎゅっと抱き着いて直親の胸に顔を押しつける。心臓がばくばくしていた。嫌われてしまったらどうしようと不安を感じる中で、薄い唇の感触に舞い上がるような幸せも感じていた。
直親の手によって、ぐっと身体を離される。刹那は一気に舞い上がる気持ちを萎ませた。恐る恐る直親を見上げる。直親の顔が近づいて、唇が触れた。ぬらりと唇を割って入ってきた舌に身体を硬直させたのもつかの間、刹那は粘膜を擦る柔らかなそれにひくひくと震えた。ちゅくちゅといやらしい音が響いて、刹那は頬を染める。
「ん、ふ・・・ちゅ、くん・・・ぁ・・・」
唇を離すと唾液が糸を引いた。直親がぽやっとする刹那の唇に触れるだけのキスをする。
「刹那・・・」
今まで聞いたことのないような甘く低い声に、刹那はぴくんと震えた。
11
直親は刹那のパジャマの上を脱がせた。
「ふぇ・・・ゃ、ゃあ・・・っみなぃで・・・」
抱きしめるように腕を回して身体を隠す刹那。
「どうして」
涙目の刹那の鎖骨に、唇を落とす。
「あと、が・・・きたないから・・・」
直親は刹那の腕を掴む。剥がして、傷痕に唇を当てた。
「綺麗だ」
痣を撫でて、乳首に舌を這わせる。押し潰すように舐めて刺激する。
「ぁ・・・っ」
ぴくんと震えた。じゅるじゅるとたっぷりの唾液を纏った舌が小さな突起をいじめる。
「ぁひ、ぁ、んぅ・・・」
はくはくと桃色の唇が酸素を求めて開く。どうして乳首を舐められているのかもわからずに、ただ直親の舌に身体を震わせた。こりこりにしこって立ち上がった乳首。歯で刺激する。
「ひぁ、く、んにゅ・・・かんじゃ、らめぇ・・・」
ぴくぴくして涙を流す。直親は一度べろりと舐めて、舌を離した。刹那のズボンとパンツを下ろす。皮を被った性器は立ち上がっていた。瞬きする刹那。
「おちんち、へん・・・」
「気持ちよければこうなる」
掌に包み込んだ。ゆっくりと皮を下ろす。
「いゃ、しな、で・・・なおちかさん・・・ひぁあっ」
現れた桃色の亀頭からぴゅぴゅっと精液が飛んだ。
12
「ふぁ・・・ん、ん・・・」
直親の首に腕を回して、ソファーに膝を立てる刹那。浮かせたお尻には食用油でぬるぬるの直親の指がのびて、アナルを解していた。
「ぁ・・・ひぁ、ぁっ」
ぐりぐりと前立腺を押す。刹那の性器は、ぽたたっと透明な露を漏らした。直親は刹那の首にキスを落とす。
「愛してる」
「っ・・・はふ・・・なおちかさん・・・」
ぎゅっと抱きついた刹那に、優しく亀頭を挿入した。
「あ、ぁっ・・・きちゃ、きちゃぅ・・・」
刹那は柔らかい突き上げにゆさゆさと揺さぶられていた。直親は乳首を指で摘んだり、舌でねぶったりしている。亀頭がぐりゅと強く、前立腺をえぐった。
「ぁんっ、ぁあ・・・なおちかさ、んっ、ぁぁあっ、でちゃぅっ・・・ひぁぁっ」
ぴゅくんと精液が溢れた。
「は・・・」
直親はアナルから性器を抜いて、刹那の震える腹部にかける。初めて見る、自分のものとは違うグロテスクな性器が射精する様子に、刹那はどきどきした。
「お帰りなさい」
玄関で刹那が待つ。直親は抱きしめた。ちゅと頬へキスをする。
「ただいま。刹那」
直親は擦り寄った刹那の唇を戸惑うことなく舐めた。直親の刹那を見る目は父親のそれではない。刹那は頬を染めて、ふっくらとした桃色の唇を薄く開いた。