バスタブ
撮影
1
鴇田屮(ときたそう)は明滅を感じ、眉を寄せる。瞳を開けた。ぼんやりと、横になったまま辺りを見回す。寝すぎたのか、頭が痛い。窓さえない殺風景な部屋は、屮の知らない場所だった。薄暗い部屋が、また一瞬明るくなった。同時に聞こえた音に、写真を撮られたのだとわかる。カメラを構える背の高い男がいた。
「だぁれ・・・?」
パシャッという機械音と共に、また光った。壁に向かって照射されるストロボ。やわらかい光は、屮が目を瞑ってしまう程の強さはない。男が、カメラを下ろす。
「おはよう、屮ちゃん」
若い。知らないひとだと屮は思う。男は携帯電話を取り出し、誰かに電話を掛けた。
「試し打ち終わった。良いヤツ撮れそう。ははっ、まだ何もしてないから」
男が携帯を切る。しゃがみ、ベッドにしどけなく横たわる屮の頬に触れた。
「・・・しらたまの、修正要らぬ美肌かな。屮ちゃんは、詠嘆ってわかる?」
ふるりと屮は首を振る。部屋の外から、人の声と足音が聞こえた。
「来たみたいだ」
ドアが開く。男は立ち上がり、屮の傍を離れた。
「流石。予定より全然早い。カメラ担当、オッケー?」
「おっけい!」
入ってきた派手な髪色の男と軽く拳を合わせて笑う。
「こりゃまたイカツイ一眼レフだな。で、いつものビデオカメラは?」
「面倒だからベッドの斜め上に固定してる。よって各自立ち位置には若干注意されたし」
ぞろぞろと現れた男達に囲まれ、屮は震えた。
「ズボン脱がしておいて何もしてねぇとか」
「俺は何もしてない」
「どうせブロマイド撮るならエッチなのがいいと思って、カメラ担当が仕事始める前にちゃちゃっとお着替えさせました~。白ティーは俺ので、カレピのおっきい萌えシャツ☆っていうシチュエーションなわけ。低予算で最の高」
「だからお前半裸だったんか・・・」
屮は、自分の下半身を見る。白い足が曝されていた。ズボン、そしてパンツも履いていないことにようやく気づく。羞恥に頬を染めた。シャツを伸ばして隠そうとするも、男の一人が屮の手を取った。シャッター音が鳴り、ストロボが光る。いい顔、とカメラを覗く男が言った。
2
抵抗しようにも、身体に力が入らない。屮の手足は男達に掴まれ、小さな身体はベッドの上で大の字になる。
「はなしてぇ・・・!・・・ゃぁあ・・・っ」
男が屮の胸から腹にかけて、重い液体を垂らす。何度もストロボが光った。ぐっしょりとシャツが濡れる。
「ローションで遊ぼうね。気持ちいいから、屮チャンもきっと気にいるよ」
肌色が透けた。男の大きな手が、いやらしい手つきでシャツ越しに屮の上半身を撫で回す。
「ふぇ、・・・さわらな、で・・・」
ぎゅっと目を瞑ると涙が流れた。どうしてこんなことになっているのか、男達は何がしたいのか、屮には想像もつかなかった。目を閉じても視線を感じる。
「ぅ、ぅ・・・ゃだ、みないでくださぃ・・・・・・みないでぇ・・・」
また、ストロボが光る。恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだった。冷たかったシャツが屮自身の体温と男の手でぬるまっていくのを感じた。手が脇腹を撫で、上へと上がってくる。身体を攀じった。
「それ、やだぁ、っ・・・ぁ・・・はぁ、ぅ・・・ん、ん」
唇を結ぶ。男の手はにゅちゅ、と音を立ててゆっくりと屮の脇を撫で上げた。
「はぁぁぁん・・・」
口から漏れた声に驚く。脇を擽られた時の感覚に似ていたが、何かが、決定的に違った。
「いい声。ノッてきたね」
屮の両脇に掌を擦りつける。別の男の手が伸び、両胸も円を描くように撫でられた。屮は喘いで瞼を開く。カメラのレンズと目が合った。
「シャッターチャンス、逃すなよ」
揃えた人差し指と中指で、男は屮の乳首を集中的に転がすように擦る。
「ふあぁぁあっ、ひゃぁぁ、やらっ、ゃらぁぁぁん・・・っ」
酷く長く続くカメラのシャッター音を、屮は耳の奥で聞いた。
「こりこりの乳首マッサージされて気持ちいい顔してるの、連射で撮っちゃった」
カメラ担当が楽しそうに言う。ローションを含んだ布越しに、硬くしこった肉の芽をくすぐられる。
「ぁぁん・・・」
「かわいいね。・・・なぁ、このローション、もしかしていつものと違う?ねばついてないか?」
男の言葉を聞いて、ローションを用意した男が感極まった声を上げた。
「おっ前!お前は違いの分かるいい男だなぁ!いつも使ってんのは俺のオキニのぬるぬる君。んでこれは新商品のぬるねば君」
「へぇ。いいな、これ」
ちゅくちゅると脇と乳首を擦られ、屮は痙攣する腰を揺らす。シャツを張りつかせた屮のペニスは膨らんでいた。
「なぁに・・・?・・・ぉちんち、あちゅぃ・・・」
屮チャン、と名前を呼ぶ声に顔を上げる。舌舐めずりをする男と視線が絡んだ。
「ぬるねば君たっぷりの俺シャツでしこしこされたら、屮チャンのおちんちんなんかきっとひとたまりもないねぇ・・・?」
男が熱っぽく言う。ひとたまりもない、の意味を屮は自然と理解した。
3
もっと、気持ちよくなる。屮は期待した。
「ぁ・・・」
男に見透かされただろうか。咄嗟に目を反らす。ずっとシャッターを切る音がしていた。ぜんぶ、撮られている。男がローションの入っている大きなチューブを握った。
「ひぅん・・・」
透明で冷たい液が、もたりとシャツに落ちる。既にたっぷりの液を含んだ布の上で、ローションはゆっくりととぐろを巻いた。男が右手を入れる。小さなペニスを扱かれる。屮は快感に身を委ねた。腰を小刻みに振って、ぬるぬるの布を纏う男の手にペニスを擦りつけてしまう。
「っひ、ぁ、ぁ、ァっ、ひ、ぁは、あぁぁん・・・っ」
男の手の中で屮のペニスが痙攣し、萎んだ。早すぎ、と男が笑う。
「ぅ、ふ・・・ぁ・・・ん」
ひとたまりもなかった。初めての射精の余韻にうっとりと酔いしれる。カメラの音に混じって、衣擦れの音が聞こえた。
「お兄さんのでかいおちんちんにぐっぽり刺されちゃってるところを撮ってもらおうね」
ぐ、と2人の男がそれぞれに持った屮の足首を、引きながら持ち上げる。お尻がマットレスから浮く。屮のアナルを犯す逞しい男は、細い腰を支えてじっくりと深いストロークを繰り返す。
「ひぃぁぁ・・・っゃぁぁぁああ・・・っ」
裸の屮はいやいやと首を振る。唇の端から涎を垂らし、膨らんだペニスはそのままに、身体をびくびくと大きく戦慄かせた。
「んな嬉しそうに締めんなよ。・・・ああ、またメスイキしたのか」
「ぁは、ぁ・・・」
肩で息をする屮。
「お前はまだイかねーの?一生懸命にご奉仕してる屮チャンのこのちっちゃいアナが、イマイチってわけ?」
「まさか。屮の尻まんこは最高だ・・・」
囁かれた屮の表情はとろけ、くすぐったそうな顔になる。カメラ担当がごくりと喉を鳴らした。
「・・・おいおい、口説くなよ色男」
「撮影を手伝ってやってんだろうが。法務大臣のお孫様のとろけきったエロ顔、ちゃんと撮れてるんだろうなあ?」
ずちゅう、とまた深く挿す。屮の腰が震える。
「ぁぁぁぁんっ、ひ、ぁ、あ、ぁぅんっ」
リズミカルに打ち込み始めた男。屮は瞼の裏で、何度も閃光が走るのを感じていた。当たり前じゃん、とカメラ担当が言う。揺すぶられながら、屮は気持ちよさに悶え続けた。