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独り寝の心得



柔道と剣道の大会のメダルやトロフィーがいくつも飾られている学生寮の一室。高西湊(たかにしみなと)は、相部屋の同級生である藤蔵雄司(ふじくらゆうじ)のベッドに転がって、携帯電話をじっと見ていた。愛らしい顔は悲しげで、瞳は少し潤んでいる。

湊は華奢な体と愛らしい容姿からは想像がつかないほど、柔道の才に秀でている。この高校にも、スポーツ特待生として入学し、現在はその強さから部員達の信望もあつい柔道部主将をしている。部屋の柔道関係のメダルやトロフィーは全て湊のもので、中には全国制覇を示すものもある。

雄司は、湊と同じくスポーツ特待生でありながら、テストでは毎回学年首席という文武両道の鏡と言える高校生。彼は剣道部に所属しており、やはり主将。部屋の剣道に関するメダルやトロフィーは言うまでもなく雄司のもので、こちらも何度か全国制覇しているのがわかる。

その雄司が、寮で生活する学生達が各々の寮で休んでいる筈の夜の9時現在に不在なのは、剣道部の遠征で県外に宿泊しているからに他ならない。湊が泣きそうなのは、遠征中毎晩メールでやりとりしている彼にメールを送ったのに、今晩に限って返事が来ないからである。
「疲れて眠っちゃったのかな・・・」
寂しがりの湊はくすんと鼻を啜った。




ぼふっと雄司の枕に顔を埋める。湊の好きな雄司のシャンプーの香りがした。ふるりと体が震える。
「・・・ぁ」
雄司が遠征へ出掛けて3日が経つ。寂しさに、メールをやり取りした後は直ぐに眠るようにしていた湊は、不意に、独りでも自分を慰めることができることに気づいた。匂いを嗅ぎながらなんて変態みたいだと思うものの、あっさりと誘惑に服す。枕に顔を置いたまま、ベッドに膝を立ててお尻をつき出すような格好になり、下着の中に手を伸ばした。
「ん・・・」
少し勃起している性器を擦る。
「ぁ、ふ・・・」
雄司の手を想像してこすこすと愛撫すると湊の性器は先端にぷく、と先走りの露を作った。敏感なピンク色の先端を指で擦ると、ぬるりとした液を塗りつけることになって、快感が湊を襲う。
「ひ、ぁ、・・・」
体が熱くて、どうにかなってしまうのではないかと思う。湊はパジャマも下着も脱いで裸になると、仰向けになり膝を立てて、右手で性器を、左手で乳首を弄った。
「はぅ、ぁ、ぁ・・・」
目を瞑る。雄司が触ってくれているのを想像して、手を動かした。
「ゅ、じ・・・ゆぅじ・・・ぁ、でちゃ、ぃく・・・ん、ぁ、ぁ・・・ひぁ、んんっ」
手の中で、性器が震える。湊は腰をびくりと跳ねさせて、久しぶりの射精の快感に涙を流した。
「泣くほどよかった?」
涙を拭う指先の感覚が頬にある。湊は瞼を上げ、とろりとした涙目で声の主を見た。
「ゅぅじ・・・?・・・!!」
ばっと、ベッドの上を後退り、壁に背中をつける。膝を折って、裸の身体をちぢこめる。
「ただいま。まさか恥ずかしがりの湊の独りエッチが見られるとはな」
雄司が微笑む。




「いつから・・・?」
顔を真っ赤にして問う。雄司は、裸になったところ、と湊に近づきながら言う。ぎ、とベッドに片足を乗り上げた。
「ど、して・・・?まだ、あとふつか・・・」
剣道部の遠征は5日間の予定だった筈なのだ。混乱する湊。
「最後に遠征で行く予定だった県でインフルエンザが流行して、二日分の予定が取り止めになったから」
言いながら、雄司は湊の額に自分の額をつけて、会いたかったと呟いた。
「湊は?」
会いたかった、と雄司を見つめる。雄司は何度も触れるだけのキスをした。まだ微量の涙を纏っている長い睫毛にも唇を寄せた。
「俺のいないところで泣くな・・・」
不思議そうな顔をした湊に雄司は、湊の泣き顔が好きだから全部見たい、と囁く。
「俺が、湊限定で泣き顔フェチなの、知ってるだろ?」
泣かれると興奮する、と端正な顔が至近距離で意地悪く笑む。


「ん、む・・・は、ちゅ、ぅ」
ベッドに組み敷かれて、濃厚なキスを受ける。
「ふ、は、湊の唇、柔らかくて気持ちいい・・・」
うっとりとそう言って、雄司は湊の唇にゆっくりと舌を這わせた。湊の性器は触られてもいないのに反り返り、蜜を垂らして震えている。
「はぅ・・・ゆぅじ・・・」
とろけそうな瞳で雄司を見つめる。
「ダメ、まだイかせてあげない」
雄司は湊の前でシャツを脱いだ。




露になった雄司の逞しい体を、ぽーっと見つめて、湊は体をよじった。
「ゅぅじ、また、きんにくついた・・・?」
白く細い手を伸ばして、ぺた、と触れる。いとおしげな視線に、雄司は口元を緩めた。
「3日で変化はないと思うけどな。・・・湊は、逞しいのが好きか?」
湊はゆっくりと起き上がって、瞳を閉じると雄司の唇にキスをする。
「すき。かっこいいゆうじが、うらやましい・・・どうして僕はきんにく、つかないのかな・・・」
すり、と胸板に頬を寄せて、ぎゅっと抱きついた湊に、欲望がたぎった。頭の中が「可愛い」で埋め尽くされる。
「このあいだ練習にきてくれた青宮さんも、僕には寝技ばっかりで」
「・・・は?寝技?」
ぴくっと雄司の眉間に皺が寄る。
「青宮って、あの外国の料理にあたって調子出せずに予選落ちしたとかいう若ハゲオリンピック選手だろ?」
湊には決して向けられることのない毒舌が炸裂する。
「寝技だと?・・・やらしい触り方してこなかったか?」
「おしりだけ・・・でも寝技だし・・・ぅや・・・」
むにっとお尻を捕まれて、湊はびくりとした。雄司が両手で揉む。
「やぁ・・・ぁ、ゃ、っ・・・んんっ・・・」
いやらしい手つきでむにむにと揉まれて、湊は震えた。
「寝技で尻?・・・触らせるなんて、お仕置きだな」




「ぁ、ぁ、らめ、ぃってゆの、ゆ、じ、ひきゃあん・・・!」
ぐちゅぐちゅと結合部から漏れる卑猥な音。足を開かされて、上から激しく犯される。湊はイきながら何度も絶頂を迎えさせられ、涙を散らしていた。湊の腹は自分の精液でしどどに濡れている。
「ぁひ、ぁ、ぁ・・・ゅぅ、ゅ・・・ぁ、ゃ・・・ん」
ひくひくと嗚咽を漏らす湊の頬に、雄司はキスをした。
「湊の可愛いところは、俺しか触っちゃダメなの。しかも性感帯とか・・・。分かる?湊」
こくこくと健気に頷く湊。
「ひぁ、ぁ・・・ん、でも、ゆぅじにしか、かんじなぃ・・・きもちくならないの・・・」
ふるふると快感に耐えるように震えながら、湊は泣きながら雄司の首に腕を回す。
「ゆぅじ、すき、だいすき・・・」


ヤり殺してもおかしくない程にサディスティックなセックスをしてしまった、と雄司は失神した湊を濡らしたタオルで清めてやりながら反省する。
「可愛過ぎるだろ・・・」
呟いて、溜め息を吐く。一通り拭って、携帯電話に手を伸ばした。開いた既読の受信メール一覧は湊からのメールで埋まっている。
「遠征終了が早まったこと、伝えなくて良かった」
ほくそ笑む雄司。普通に伝えて湊を喜ばせるか、予定より早く帰ってきて湊を驚かせるかの二通りを考えて後者を選んだ雄司だったが、驚かされたのは自分の方だった。
「・・・まぁ、遠征でもない限り、独りで抜く暇なんかやらないし、独り寝させるつもりもないけど」

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