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王子と蜜月を



「嘘・・・」
僕の鞄を持って走り去る、がたいのいいお兄さん。あっというまに、人込みに紛れます。
僕、佐川柚希(さがわゆずき)は空港の真ん中、南の島国に来て早々、置き引きにあいました。
「・・・どうしよう」
僕の一人旅に反対した両親の顔が思い浮かびます。パスポートと少しのお金は身につけているように言われ、手元にあります。もし鞄にいれていたらと考えるとぞっとしました。頭を振って、大丈夫と自分に言い聞かせる。
「・・・僕だって、高校生だもん」
友達に、ふわふわしていると馬鹿にされるけれど。う・・・初めての一人旅、楽しみにしてたのに。
「いかがなさいました、お客様」
日本語に驚いて、顔を上げると、かっこいい色黒の空港スタッフのお兄さんがいました。黒い髪はオールバックに撫でつけられていて、優しい黒い瞳に見つめられています。白い清潔なシャツと、少し屈められたすらりとしたモデルのようなたたずまいに、僕は見とれました。
「お客様?」
懐かしい、日本語。僕は安堵から涙目になって、パスポートを見せ、置き引きにあったことを話しました。


「ぁの、どこへ、行くんですか?」
お兄さんに手を取られて、空港の中を進む。
「~~~~~」
お兄さんと僕の前に黒いスーツの人が現れて、この国の言葉で何か言いました。英語なら、まだわかるかも知れないのに。見せられた写真には、長髪の金髪で金色の瞳のかっこいいお兄さんが写っていました。
「~~~」
スタッフのお兄さんが何か言った後、黒いスーツの人は僕を見ました。
「この人を見ましたか?」
スタッフのお兄さんが僕に言う。どこかで見たような気もするけれど、僕は首を振りました。
「~~~~~」
スタッフのお兄さんが黒いスーツの人に伝えたようで、黒いスーツの人は僕達から離れました。
「お客様、こちらへ」
豪奢なエレベーターに乗せられます。着いた所はホテルの一室でした。空港から出ていないので、空港の内部の筈です。綺麗で、広い。奥にはもっと部屋があるようでした。
「お兄さん・・・!?」
意味がわからなくて、後ろを振り返ると、そこには、オールバックの黒髪のスタッフではなくて、さっき見せられた写真のお兄さんがいました。




ソファーに「俺のことを知らない」少年を座らせ、自分もその隣に座る。外政とファッション業界に疎そうな日本人旅行者の少年。泣きそうな顔が可愛かったから連れて来てしまった。
「あなたは、だれ、ですか?」
俺が何者かに追われていることを知っている少年は、不安げに俺を見つめる。大方、犯罪者あたりを予想しているのだろう。少年の瞳は机の上の黒髪のカツラを見た。
「俺の名は、イーゴリ。親しい者はイーゴと呼ぶ。君は?」
少年は小さくユズキと言った。
「ユズキか」
少年によく似合っている。口元が綻んだ。
「イーゴリさん、は、どうして、僕をここへ?」
大きな薄茶色の瞳。見れば見るほど、ユズキは可愛かった。俺の、タイプなのかもしれない。
「置き引きにあって困っていただろう?滞在中、ここに泊まればいい。ただし、俺と暮らすことになる。・・・俺は犯罪者ではないし、ユズキに危害は加えない。どうだろう」
ユズキはまだ警戒している様子だったが、寝る場所を与えられたのだと好意的に理解したのか、ありがとうございますと言った。
「それから、悪いがこの部屋にテレビはない」


クローゼットを開くと、あらかじめ執事のミラスに用意させていた洋服がある。俺はグランドスタッフの制服を脱ぎ、シックな黒のパンツとタイトな白いシャツを着る。オールバック用のカツラを仕舞い、別の黒髪のカツラを取り出した。髪を縛り、ネットに詰めて、カツラを被る。カラーコンタクトはそのまま。
「ユズキ、出掛けようか」
クローゼットの大きな鏡に映るユズキと視線を合わせる。ずっと黙って俺を見ていたユズキは、いきなり目が合ってびっくりした様子を見せた。
「ぇ、ぁ・・・っ、どこへですか?」
「買い物。置き引きにあったんじゃ、服に日曜品、何もないだろう?」
「でも、お金・・・」
「心配するな。俺が出す」




僕は、イーゴリさんと、買い物に来ています。断ろうとしたのですが、服の替えが無いのは困るだろうと言われ、断れず来てしまいました。下着の替えもないのは、確かに困ります。安めの服をいくつか選んでイーゴリさんに渡したのですが、イーゴリさんはいくつかを、こちらの方がいいと、わざわざ高い物に変えて購入しました。別の、本当に高級そうなクラシックな洋服店では、サイズまで計って服を誂えました。イーゴリさんは出来上がった服を見せてくれなかったけど。
「・・・どうして、こんなによくしてくださるんですか?」
僕の質問を無視して、イーゴリさんは水着を見ています。
「この国の海は最高だからな。・・・ユズキ、水着を買ってやろう」
スタッフの振りをしていた時みたいな、柔らかい笑顔。イーゴリさんは何者なのか全然わからないけれど、紳士的です。
「い、いいです!水着なんて、僕っ」
置き引きにあった時点で観光なんか、諦めています。
「これなんかどうだ?似合いそうだな」
水色の、ビキニでした。びっくりして、そんな物を履いた自分を想像して、真っ赤になりました。恥ずかしいです。
「イーゴリさん、帰りましょう!」
僕は、イーゴリさんの手を取って、空港に戻りました。



「そろそろ夕飯だな。ユズキ、これを着て」
差し出されたのは、あのクラシックな店で誂えた服。
「ぁ、あっちで、着て来ます・・・」
逃げるように別室へ行く。紙袋を開いて、絶句しました。黒い、フレアの、ドレスでした。ご丁寧に、女性用の下着と長い手袋、チョーカーまであります。閉めたドアの奥に、イーゴリさんの気配がしました。
「イーゴリさん、僕、男です」
「ユズキ、君に拒否権はないよ。今から行く店は、男二人では格好がつかないんだ」
男ものの水着を薦めたイーゴリさんが、まさか僕を女と勘違いしているわけがないのです。僕は羞恥を感じながら、着替えました。とにかく、逆らってはいけない。

「・・・ユズキ、よく似合う」
後ろで声がして、振り返るとイーゴリさんがドアの所にいました。
「では、参りましょう。お嬢さん」
優雅な仕種で手を取られます。イーゴリさんはあのオールバックの髪型で、クラシックなスーツ。かっこいい姿に、僕は目眩すらしました。女の子だったら、恋してたかもしれません。




空港近くの一流レストランに入る。カウンターでイーゴリの名は使わない。
「こちらへどうぞ」
リゾート地として開発された空港の周辺と一部のビーチの為に観光に来る外国人は多い。このレストランは国内では最もレベルが高く、各国の要人もやってくる。
「イーゴリさん、僕、浮いてますか?なんだか、皆に、見られてる、気が・・・」
自意識過剰ですか?と潤んだ瞳で俺を見た、黒いドレスのユズキ。不安からか、俺の腕に腕を絡めている。
「ユズキのせいで俺がロリコンに見えるからだろう」
柄にもなくどきどきして、思ってもないことを言ってしまった。ユズキは少しぽかんとした後、小さく吹き出した。
「だったら、注目されてるのは、イーゴリさんですね」
初めて笑った顔を見た。可愛かった。ユズキには化粧を施してある。更に長くなっている睫毛に瞳が縁取られている。グロスで、唇はつやめいていた。
「僕、頑張って、最後まで女の子の振り、します」
使命感に燃えるユズキは、言うだけあって、しとやかだった。


ここに来たのには訳がある。俺は斜め左のテーブルの会話に耳をそばだてた。
「で・・・ニーナ・・・王様も、大変申し訳ないって・・・諦めるしかないでしょう」
今日、勝手に入れられた見合い相手、ニーナの母親の声。ニーナは渋っているようだが、やがて受け入れた。俺はほっとする。いつもは見合い話に乗らない俺が見合いを受けたとなっては、相手も期待したことだろう。無駄に喜ばせ、突き落とした。俺に内緒で見合いを承諾した母の無神経さが恨めしい。
「・・・ちゃんと出向いて断らない誠意ない俺も、同じか」
一人ごちる。俺は、一国の王子である自分の境遇を肯定することも、否定することもできていなかった。王子だというのは事実だが、しきたりに飲み込まれるつもりはない。我が儘なだけだということは、気づいているが。
「いーごり、さん?」
ユズキが首を傾げる。肩まである茶色のウェーブのかかった髪が揺れる。頬を桃色に染めている。心なしか呂律が回っていないように聞こえた。
「・・・桃色に・・・?まさか」
ユズキの手にはワイングラス。
「ユズキ、酔ってるのか?それはワインだが」
「ちがいます、よってなんか・・・」
ユズキの肩がふらりとした。もうここに用はない。俺はユズキを俗にいうお姫様だっこで抱き上げた。店を出る。ドレスのスカートからミュールをかけた白い足、爪先が覗いている。くびれた細い足首に、酷く欲情した。




「んぅ・・・」
目を覚ますと柔らかなベッドの上でした。スーツの上着を脱いだだけのイーゴリさんに抱きしめられている僕。イーゴリさんはカツラをしていなくて、金色の髪を流しています。密着していて、静かな息が、僕の首に当たっていました。変な、気持ちになります。
「ぞわぞわ、しちゃぅ・・・」
気づけば、僕も昨晩の格好のままでした。急に、女ものの下着をつけていることを意識して、股間に熱が集まります。もじもじと、ふとももを擦り合わせると、下着とおちんちんも擦れて、ちょっとだけ気持ちいい。
「ん、ん・・・は」
目をつむると、昨晩の格好のイーゴリさんと僕がいました。
「優しく、擦られるのがいいのか?」
妄想の中のイーゴリさんが言いました。くちゅと音がして、掴まれます。
「それとも、扱かれたい?」
僕はぎゅっと目を閉じて、腰をもじもじします。現実ではイーゴリさんがいるし、触れません。
「いーごりさ、ぁ、ふ・・・しごいて、ぐちゅぐちゅし、て・・・」
妄想の僕が言って、イーゴリさんが耳に唇を寄せます。
「扱いていいんだな」
耳を舐められました。妄想じゃなくて、本物の、舌と声。びっくりして見ると、金色の綺麗な瞳。
「い、イーゴリさ・・・」
「今、俺に扱いてと言っただろう?」
僕は妄想ではなくて、本当に口にしていたようでした。スカートがたくしあげられて、パンツにイーゴリさんの手が入る。
「ひ、きゃぁぁんっ、ぁっ、あっふぁぁあっ」
言葉のとおりぐちゅぐちゅと音を立てて、小さな僕のおちんちんをイーゴリさんが扱きます。
「ぁ、ぁあん、らめ、らめぇっ、ぃっちゃ・・・」
「可愛いな・・・」
「ひぅ、はぁあん・・・っ」
耳元で熱い吐息を吹き込まれて、僕はびくびくとおちんちんを痙攣させました。ぴゅっと精液が出ます。
「はぁっ、は・・・んぅ」
イーゴリさんの舌が僕の頬をぺろりと舐めました。
「汚れたな・・・。一緒に風呂入るか」
お姫様だっこされます。体が動きませんでした。今更、頭が痛いです。


イーゴリさんと服を着たままお風呂に入りました。途中で全部脱がされて、びっくりしたけど、手際よく体と頭を洗われて、お風呂から放り出されました。お風呂の中のイーゴリさんが言います。
「俺はゆっくりしてから出る。バスタオルは棚、服は昨日買ったものをそこに出した。着たらすぐに、部屋に行くんだ」




ユズキが脱衣所から出た後、風呂場で抜いた。
「はぁ・・・何してるんだ・・・俺は」

風呂から出るとユズキは顔を真っ赤にして俺を見た。
「イーゴリさん、ごめんなさい、僕・・・」
「気にするな。男の生理だろう。それより、もう昼だが、飯は食えるか?」

昼食、夕食とユズキを昨晩とは違う家族連れが気ままに行くような軽いレストランに連れていった。島の魚や木の実の美味しさに、ユズキは落ち込んでいた様子を徐々に回復させていった。



あっという間に2週間が経った。一度、足を海に浸すだけでもと浜に行ってから、ユズキは海に近づくのを嫌がる。景色を眺めながら、海の遠くを二人で散歩する日々が続く。
「金槌なのか?」
聞けば、首を振る。いつもの散歩コースの後、食事を取り、俺はユズキを部屋に帰し、一人で出かけた。ユズキは3週間しかここにいない、観光客だ。


「やだ、やですっ、海には、行きません」
「ユズキ、一回だけだ」
俺は昨日買ってきた物をユズキに渡した。ユズキは中を見て赤面する。
「やだぁっ、むり、無理です・・・っ」
「・・・きっと似合う」
頑なに首を振るユズキに、俺は汚い最後の手段を使った。
「ユズキ、断るのか?」
置き引きにあったユズキの今の旅行は、俺無しでは成り立たない。ユズキは真っ赤になって、泣きそうな目で俺を見た後、走って別室へ行ってしまった。俺は悩ましげな瞳で睨まれ、欲望を感じる。
「変態だな・・・」
あの朝以来、進展はない。



「ユズキ、似合ってる」
自分はカーゴパンツという格好なのに対して、ユズキは上にシャツを羽織っているとはいえ大胆に足を露出した水色のビキニ一枚。白い肌が焼けてしまうのはいけないと思うものの、ユズキの姿への欲望の方が固い。恋人のように手を繋いで歩いているだけで幸せだった。
「あの、そこの黒髪のカッコイイお兄さん」
英語で呼び止められる。アメリカ人らしい白人女性が3人。誘いを断ろうとするやいなや、ユズキが俺の手を振り払って走りだした。ユズキが向かった方向は、未開発の地域だった。




「イーゴリさんのばか・・・」
僕は女の人達がイーゴリさんを憧れの目で見るビーチという場所を、前回来たときから嫌いになりました。綺麗な景色なんだと言うイーゴリさんの言葉は真実で、僕に見せたいと言う言葉は嬉しかったから、遠くから景色を眺めて散歩するだけで満足でした。
「もう、やだ・・・」
僕は、この醜い感情を知っています。
「・・・嫉妬してるの」
涙が流れて、僕は目を擦りました。
「嬉しいな」
後ろからぎゅっと抱きしめられました。首にちゅっちゅっと唇が吸いつく音。
「イーゴリさ・・・」
驚きに涙もひっこんで、逃げようともがきましたが、逆に体を反転させられて目が合う。
「好きだ・・・ユズキ」
唇が熱い。


「ぁっ、ぁ・・・・っ」
ビキニの上からおちんちんを揉まれて、乳首を舐められています。固くなったおちんちんをちゃんと触って欲しくて、僕は腰をイーゴリさんの手に押しつけました。
「生で触ってほしい?」
「ぁ、ぁ、さわって、なまで・・・」
イーゴリさんがビキニをずらすと、僕のおちんちんが横から飛び出しました。長い指に包まれて、上下されると、信じられないくらい気持ちよくて、僕は大きな声であんあん言いました。
「いくら未開発の場所といえど、隣はビーチだ」
イーゴリさんは唇で僕の声を奪いました。舌が熱い。唇が気持ちいい。不意に、ちゅっと唇が離れました。くちゅちゅっと扱かれます。
「は、はぁぁあんっ」
びくびく痙攣する僕を、太陽を背負ったイーゴリさんが見ています。
「いっぱい出したな。いい子だ」
イーゴリさんがぬるぬるを手につけて、お尻の穴に塗りつけます。
「んっ、ぁぁぅ、ゆび、はいっちゃ・・・?」
「ユズキは俺をここで受け入れるんだ。いいな?」
僕は頷きました。だけど。
「ぁぁんっん、きゃぁあっ、や、だめ、しちゃいゃぁぁあっ」
「頷いたのにか?」
「だって、そこ、しんじゃう・・・らめ、らめっしないで、こしゅっちゃ、やらぁぁあんっ!」
指で引っかかれると、おちんちんが、爆発したみたいに汁を撒き散らしました。
「エロいな・・・」
「はひん、は、ぅ・・・いーごりさ、いやぁ・・・」
「・・・イーゴって呼んで」
ぐちゅとイーゴリさんのおちんちんの先端を押しつけられました。イーゴ、親しい人が呼ぶ愛称。
「いーご、いーご・・・ひぁぁああぁんっ」
ぐちゅぐちゅされて、頭がおかしくなります。
「あっ、ぁん、いーご、ぁぁっ、ひゃうぅっ」
びちびちと、おちんちんはずっと魚のように跳ねていました。




昼間から、ベッドの上でまぐわる。
「んふぅ・・・いーご、いーご・・・ぁ、ぁ・・・」
ひくひくと桃色に染まった白い体を震わせて、ユズキは俺の首に腕を回してほお擦りしてきた。
「いーご、すきぃ・・・・・・ぁ、ひやぁっ、おっきく、なった・・・」
ぐっと股間に熱が集まる。ユズキの中で、また膨脹したのだ。
「可愛いこと、言うからだろ」
「だって、だって、好きだもん・・・」
涙目になってユズキは小さく言った。何だこの可愛い生き物は。俺は性器をユズキの腸に擦りつけた。
「ひゃぁあぅっ、あ、ぁぁんっ!」
小さな身体を抱きしめる。
「帰したくない・・・」
ユズキの帰りは、刻一刻と迫っていた。



何日もずっと、ユズキの体を求める日々が続いていた。俺は甘いユズキに心酔している。風呂からあがると、そのユズキが涙目だった。
「イーゴ、これ、なに?」
ユズキの手にはアメリカのタイムズ紙から下品なゴシップ紙までありとあらゆる「俺」が取り上げられている雑誌が抱えられていた。どこかで集めて来たらしいそれは、かなり年季の入ったものもある。
「The prince goes missing、王子失踪って・・・この地図、この国だよね?イーゴはこの国の王子様なの・・・?」
ユズキは英語ができるらしく、流暢に見出しを読んだ。
「ああ」
「どうして、教えてくれなかったの?」
「タイミングが分からなかった」
正直に言った。俺は屈んで、ユズキの頬を撫でる。
「俺が自分はこの国の王子だと言ったところで、ユズキは信じたか?それに、俺は自分が王子だということを言いたくなかった」
「じゃぁ、こっちは?」
激しい紫色の雑誌。独特の書体で「The world-famous model is madly in love with her !」写真は、2年前のもの。
「イーゴ、モデルなんだね。僕、知らなくて・・・」
ユズキは他にも俺が女性を肩にしな垂れかからせいる写真の雑誌を持っている。
「モデルは、遊びだ。いずれ国務に従事しなければならなくなる。女達とはもう別れている。どの女性も教養がありしとやかだった」
ユズキが苦しそうな顔をした。
「だけど、それだけだ。ユズキほど、俺をメロメロにした恋人はいない」
ユズキはかぁあっと頬を染めた。
「・・・イーゴ、僕にめろめろ、なの・・・?」
「ああ、ユズキだけにメロメロだ。恋人と毎日セックス三昧なんて、考えられなかった」
耳まで赤くしたユズキを押し倒す。
「俺の愛を疑ったユズキには、お仕置きだな」




長い、まだ少し湿った、綺麗な金色の髪と、僕を見る金色の瞳。腰に巻いた白いバスタオルとは対象的な、セクシーな黒い肌。僕が愛する人は、見た目そのままに王子様で、モデルでした。
「ユズキ」
名前を呼ばれて、僕は体を震わせました。僕、いやらしい。
「もうパンツの中で濡れてるな」
そう言ってイーゴは僕のズボンをずり下ろして、脈打っている僕のおちんちんを見ました。
「ひ、はぁぁあんっ」
おちんちんを熱い口の中に入れられました。それだけでぞわぞわした僕は、ふるふると首を振りました。
「だ、めぇ・・・いーご、やめ、ぃぁあっ、ふあぁん、いーご、らめらよぅっいっちゃうぅぅっ、ひぁぁあぁぁ!」
イーゴに口の中でぐちゅぐちゅされて、僕は腰を浮かせていってしまいました。
「ぁ、んぅ・・・」
気持ち良くて床にくったりしていると、抱き上げられて、ベッドに降ろされました。
「これじゃお仕置きにならない」
そう言って、イーゴは僕を置いて行ってしまいました。お仕置きされるんだと思うだけで、おちんちんは膨らみます。何かを持って帰って来たイーゴ。
「ユズキ、これが何か知ってる?」
おちんちんの形のピンクのプラスチック。下から、コードが伸びています。
「おちんち、の、にせもの・・・?」
「正解」
イーゴが偽物にジェルを垂らしました。お尻に、ぐちゅうっと入ってきます。
「はぅう・・・」
あ、イーゴのとだいたい、同じ。思って、僕は赤くなりました。イーゴはコードの先にあるリモコンのようなものを触ります。
「ぁあぁっ、ぶるぶる、してる・・・んん」
振動が大きくて、気持ちいい。だけど、これは、僕の欲しいのとは違いました。
「ぁっ、いーご、いーごのが、いいの、ぁうんっ、奥までついて、精液びちゅびちゅしてくれなきゃ、や」
イーゴに向かって腰を降ります。イーゴの熱くて固くて長いおちんちんが欲しい。いっぱいキスされて、偽物が抜かれます。
「んぁっ、いーご・・・」
「欲しい?」
イーゴはぬるぬると肌におちんちんを擦りつける。
「ほしぃ・・・いーご、いーご、いっぱい、僕できもちいくなって、きもちいくして・・・」
イーゴは苦しそうな顔をした後、ずりゅっと一気に入ってきました。
「ユズキ・・・」
「あっ、あ、ひっ、ぁあぁんっひぁあっ」
ぱんぱんとおちんちんが打ち込まれて、僕は歓喜にうち震えました。


10

ついに、ユズキが帰ってしまう。会ったときから予定されていたことだ。ユズキは日本の高校生で、まだ俺が束縛できる人間ではない。俺はチケットを握るユズキを抱きしめた。
「イーゴ・・・僕のこと忘れないでね」
泣きながら言うユズキに、柄にもなく腹立つ。
「俺が、ユズキを忘れると思っているのか?」
ユズキはぼろぼろと涙を流す。
「だって、何年後に会えるかわからないから・・・っイーゴ、かっこいいから、きっと素敵な人と出会って、結婚する・・・。僕、子どもできないから、一国の王子様となんて、不相応なの」
揺れる瞳の誠実さにいらいら、した。俺は、ユズキにとって、その程度なのか。きれいごとで、俺から去っていくのか。
「ユズキは、俺が誰か別の人間と契りを交わすのを、本当に仕方がないと、そう思っているのか?」
抱きしめて、何度も口づけた。
「ぅ、ふぇ、やだ、いやにきまってるも・・・」
俺の胸でユズキが泣く。
「俺は今、ユズキと契りたい」
ユズキが涙目を上げた。
「ユズキ、婚約しよう」
ユズキは俺にぎゅうぎゅう抱きついて、する、と言った。






ユズキが日本に帰ってから3年経った。俺はモデルを引退し、一国の王に就き、自然豊かなリゾート地として名高い、この島国を治めている。
ユズキとは、3年間一度も連絡を取っていない。
「王様、ユズキと名乗る方が面会を希望しておられますが」
側近の言葉に、俺はどくりと心臓を脈打たせる。


「ユズキ」
名を呼ぶと、肌の白い茶色の髪の青年が顔を上げ、こちらを見た。
「イーゴ・・・っ、会いたかった・・・!」
愛らしい幼い顔はほとんど変わっていなかった。
「俺もだ、ユズキ・・・」
俺はユズキを抱きしめて、これから始まるであろう甘美な蜜月に目を細めた。


おまけ

日本に帰ると、普通の日常があっさり戻ってきて、僕は南国での出来事が夢だったのではないかと不安になりました。だけど、イーゴに買ってもらった服や日曜品を眺めて、幸せな気持ちになる僕は、明らかに日本を発つ前の僕とは違っています。それに。
「ぁん、いーご、ぁ、ぁ」
イーゴに貰った偽物のおちんちんで自分を慰めるいやらしい僕も、日本を発つ前なら有り得ませんでした。
「きもちぃ・・・もっと、して・・・いーご・・・」



日本に帰って2ヶ月経った頃、ニュースでイーゴが取り上げられました。モデルを引退して、国王に就くと報じられます。普段テレビをあまり見ないので、イーゴを見られたのは運命だと勝手に思って顔をほてらせて見ていると記者会見が始まりました。いくつかの差し障りのない質問の後。
「失踪なさった時は、何をしていらっしゃったのですか?世界を騒がせたのに、未だ理由も明らかになさっていませんが」
会見の空気が少し変わりました。聞き方が不躾だと気の強そうなアメリカ人の記者に怒りを滲ませながらも、他の記者達が皆聞きたがっているのがわかります。
「恋人と一足早い蜜月を堪能していました」
記者達がどよめきます。僕はイーゴの表情に、どきどきしました。
「蜜月、といいますと、その恋人とは結婚のご予定が?」
「はい。数年後には。・・・ユズキ、愛している」
唐突な愛の告白に僕はもちろん記者達も赤くなっているのがわかります。
「では、国務がありますので、失礼します」
去るイーゴに、記者が叫びました。
「Who is Yuzuki?」

その後発行された新聞にもいっぱい「Who is Yuzuki?」の文字が踊って、僕は赤くなる毎日を送りました。周りの人は、赤くなる僕を不思議がりましたが。

僕は、大学に進んで、あの南国の言葉を専攻するつもりです。

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