バスタブ
白獅子が吠える
1
山の中のよく整備された道の脇には、動物を模したキャラクターの看板。吹き出しに、博物館まで400メートルとある。
「皆ー!ちゃんとついてきてるかなー?もう少しで博物館だよー!」
列になる小学校三年生の子ども達は、担任の先生にはーいと元気に返事をした。今日は遠足で、向かう先は山の中の博物館である。博物館の近くにはアスレチックもあるというので、子ども達は遠足を楽しみにしていた。ただ一人、高須翠(たかすみどり)を除いて、だが。
翠は昔から、山のある場所が苦手だ。聞こえてはならないものが聞こえて、怖いから。
『またあの博物館?とやらに団体様だぜ』
『そういう時期なんだよ。天候も安定してるしな』
2つの男の声が、上の方から聞こえた。翠は恐る恐る周りを見回すが、それらしい男がいないのは予想していた。いつもと同じだった。
「翠くん?止まってると置いてかれちゃうよ?」
列の最後につく副担任の先生が言う。
『・・・なぁ、アレ、先祖返りってやつか?』
翠の耳には届かない。
「これが鷹の標本です」
館内ガイドの女性がにっこりと笑む。かっこいいと子ども達の口から漏れた。
「皆さん、鷹と鷲の違いは知っていますか?」
口々に知らない、とか違うの?とか言っている子ども達に女性は標本を指しながら解説する。
「鷹は、タカ目タカ科の鳥のうち小さめのものを指します。タカ科に分類される鳥で大きいものを鷲、小さめの鳥を鷹と呼び分けているんですね。でも二つを分ける大きさについては、明確に決まっていません。例えばこちらのクマタカはタカ科の中でも大型ですが、名前の上ではタカですし、こちらのカンムリワシ、小さいでしょう?名前の上ではワシですが、タカと言ってもおかしくないのです」
2
「じゃあ皆、今からお昼を食べましょう」
博物館から出たところで、先生が言う。深い山の中だが、博物館の周りは平らに整地され、綺麗に芝生が生えている。シートを敷こうとしゃがんでリュックを下ろした翠の周りが、声で溢れた。
『こいつが例の鷹憑きか?』
『そうだ、鷹の匂いがぷんぷんするだろうが』
『確かに凄い・・・でも、鷹憑きは鷹栖の家の41代目で力を封印したって聞いたわ』
『文明開化とか何とかで科学が進歩して、鷹と話をする鷹憑きが気味悪がられ始めたからだよ。果てには実験台にされそうになったとか』
『ふーん。この子、力が強いから先祖返りしたんだ?』
『翼をもつものの憑き人の復活だな・・・』
『ねぇ、仲良くする?』
『可愛いし、俺は仲良くしたいなぁ』
自分の周りに沢山の鷹が集まっていた。頭が割れるように痛い。翠は意識を失った。
「心配しすぎじゃ。初めて沢山の鷹の思念が脳に流れ込んで、パンクしただけじゃて」
「パンクってお父様・・・。鷹達に翠のこと知られて、これから翠は・・・だから森に行かせるのも反対だったのよ」
「うるさいの。遠足に行かせん親がおるか?翠に鷹憑きの血が色濃く出とったのは知っとろう。ご先祖様も封印しきれんのが先祖返りじゃ。仕方あるまい」
「でも、このままじゃ翠が危ないじゃない」
「・・・手は打ってある」
祖父と母の口論に、翠は目を覚ます。病院だった。
「翠!」
「・・・たかつきって、なに?」
鷹達も言っていた。祖父と母も知っている。
「鷹と話せる人間のことじゃ、翠。お主は、いずれ鷹に変身することもできるようになるじゃろう」
祖父が優しく笑む。心配しなくてよいと言うように、翠の茶色い髪を撫でた。
3
祖父が言うには、翠の先祖である鷹栖はある村の術者として重宝されていたらしい。鷹と懇意にすることで偵察し、周りの村の攻撃から村を守っていた。しかし、近代になるにつれ、その能力は不要になるだけでなく、周りの普通の人間が彼らを忌み嫌う要素に変わっていった。そして、鷹栖は高須に改名し、力を封印することを決めた。
「翠、お主は先祖返りじゃ。ご先祖様の力がどういうわけか隔世遺伝してしまったようなんじゃ。ご先祖様の力は鷹憑きと言う。鷹の憑き人じゃ」
翠は祖父の瞳を見つめた。
「・・・他の動物の人もいるの?」
「無論、おるとも。獅子憑き、猿憑き、猫憑き、犬憑き、他にもおる。ただ、空を飛べる生き物の憑き人は、大抵各々の地方でその能力を周りの人間の為に使っていた。空を飛べると、広い範囲のことがよく見える。隠さずに使っておった。だから、時代の変わり目に残さず迫害されてしまった。今、日本人で鳥の能力を持っているのは翠、恐らくお主だけじゃ」
外へ出ると鷹が集まり、翠の脳が耐えられなくなるからという理由で、翠は家に閉じ込められていた。
「いつまでだろう・・・」
カーテンも開けてはいけないと言われている。こんこんと部屋の扉をノックする音に翠は返事をした。祖父だった。
「今日から翠にはこの家を出て、特殊警察の元で訓練をしてもらうぞぃ。外に出られんのは辛いからの」
祖父の後ろには、黒い軍服のような制服を着た、白い髪の長身の男がいる。端正な容貌のその男が口を開いた。
「はじめまして、翠様」
それが翠の、白亜春臣(はくあはるおみ)との出会いだった。
4
特殊警察の本部へ向かう護送車の中で、翠は特殊警察について春臣に習った。運転席の春臣の様子は伺えないが、後部座席にちんまりと座った翠は彼の言葉に耳を傾ける。
「特殊警察は憑き人で構成された警察であり、普通の人間で構成されている会社に入る一般の憑き人のサポートや、獣憑きの能力を乱用する憑き人を取り締まる」
翠は春臣も何かしらの動物と話せるのだと知り、興味を持ったが、口には出さなかった。
「先祖返りは珍しいパターンだ。加えて、鳥は、恐らく日本人では最後。翠様は様々な悪い人間に狙われる恐れがある」
ぴくりと反応する翠。少し赤くなりながら、意を決して違和感を伝えるために桜色の唇を開く。
「ぁの、春臣さん・・・翠さまって、さまづけは、いやです・・・」
バックミラーに映る春臣の緑色の瞳と目があう。翠はどきりとした。
「では、何と呼べば?」
「呼び捨ててください・・・けいしょうは必要ない、です」
「私はあなたのお祖父様に返しきれない恩がある。どうしても、と言うなら、質問に答えて欲しい。・・・それは命令で?」
問いに面食らったが、翠は頷いた。
「御意。ならば翠も私のことは呼び捨ててください。これは、私からのお願いだ」
5
特殊警察本部の特別警護室と名付けられた部屋で、翠が訓練を始めてから一週間が経とうとしていた。たまに両親が面会に来るが、それも獣憑きでないために制限されているらしい。寝るとき以外はほとんど春臣と一緒にいる。
今、翠の目の前には30羽の野生の鷹が檻に入れられている。各々が翠に思念を飛ばしていて、翠は意識して赤い首輪を着けた鷹の思念だけを得ようとしている。ぱん、と手を打つ音。
「10分。休憩だ」
春臣の言葉に翠は力を抜く。
「どうだ?」
「・・・赤い鷹が考えてることだけを聞くのは、まだむずかしいです・・・」
翠は春臣の端正な顔を見つめた。春臣は苦笑する。
「まだ、じゃない。初めは同じ空間に鷹が10羽いるだけで気を失っていたくらいだから、短時間でよくできるようになっている」
労るようにかけられた言葉に翠は、はにかんだ。
「捜査の方に駆り出されることになった。暫くの間は一人で訓練に努めて欲しい」
夕食の席で春臣が言う。
「誘拐された獣憑きの子どもが出品される闇オークションがあるんだが、捜査部長の蛇ノ目先輩が行方不明になって、お鉢がまわってきた」
「やみオークション?」
「参加者が獣憑きの、違法な人身売買、と言えば分かるか?」
翠はこくりと頷いた。
「お金で、人を売り買いする・・・」
「特殊警察が取り締まらなければならない重犯罪の一つだ。今朝の垂れ込みがデマでなければ、今度は日本人の鳥の憑き人が出品されるらしい」
鳥?と瞳を輝かせた翠に、春臣は友達ができるかもな、と微笑んだ。
6
春臣の作ったスケジュール通りに訓練に励めば、できることが増え、嬉しい気持ちになる。もう30羽なら何時間同じ空間にいても脳に負担を感じない。
「寂しい・・・」
ベッドに横になって、一人ぼっちの夜を過ごす。扉がノックされて、翠は跳ね起きる。
「春臣」
喜んで扉を開けた翠を迎えたのは、知らない男だった。しかし、春臣と同じような黒い軍服を着ている。翠に警戒心は無かった。
「?」
男はにっこりと紳士然として微笑む。翠の口を布で塞いだ。
気がつけば、翠は大きな檻に入れられていた。裸に剥かれ、手枷と足枷、猿轡で拘束されている。
「さぁ、本日の目玉商品はこちら!」
眩しさに目を閉じる。ぱっと自分にライトが当たったことに気づいた。
「なんとなんと!日本では最後の鳥の憑き人の少年だ!!しかも鳥の中でも王者の鷹!!まだ小さいですが、この通り綺麗な顔です!毎晩可愛がって淫乱に仕込むもよし、種馬として飼うのもまた一興!娘さんをお持ちの方にはおすすめの上物と言えましょう!鷹憑きの孫はいかがですか?では、5千万から!!」
5100、5300、5700、6000、と参加者達が口々に競り落とそうと値を上げる。
「さあ1億来ました!おっと1億1千万!」
マイクを持った司会の男の声が響く。翠ははらはらと涙を流した。
「うひゃー、ペース早過ぎ。こりゃ、初めての5億円越えも夢じゃねぇな」
「いや、蛇ノ目の旦那が哺乳類を興奮させるお香を炊く周到振りだ。俺は7億いくと思うぜ」
檻の傍に控える男が2人、笑う。
7
「5億1千万!ここで我がオークションの過去の記録が更新されました。ささやかですが御礼を・・・」
がちゃと鍵が開けられて、男が2人、翠が囚われる檻に入ってきた。一人が翠の足枷を取り払い、手枷を嵌められた腕に頭を入れて立ち上がる。翠は男にしがみつく形で抱き上げられた。もう一人はしゃがみこみ、ぬるりとした液を纏った手で、翠の尻を揉んだ。
「ん・・・っ」
震える翠。猿轡のせいで声をあげることはままならない。アナルを撫でる男の手。ずぷっと太い指が翠のアナルに刺さった。
「ぅんーっ、ん、っ」
「猿轡が邪魔ですね、外して」
司会の言葉に猿轡が外される。ずぷっずぷっと太い指が抜き差しされた。
「ゃ!ゃ、ぃたぃょぅ・・・っ、ん、ゃぁっ、ゃ・・・」
男の指がある一点をついた。
「きゃひぃんっ」
「おっ、前立腺をついたようですね。もっと擦って見せなさい」
司会の男が言う。観客達は固唾を飲んで見ている。翠は泣いた。じゅぷっと男の指が中をかく。ぐりっぐりっと気持ちの良いところを押していく。
「ぁひぃぃんっ、らめぇっ、ら、めぇんっ、きゃふ、んきゃぁぁっ!」
びくびくと細く白い肢体が痙攣した。
「おやまぁ、イっちゃったみたいですね。男の子なのにいやらしい穴におチンチンを欲しがる素質ありということが判明しましたよ、皆様!そして、ご存知、我がオークションはサービス精神の塊!おチンチンを見せて差し上げなさい」
男が、くったりとしてひくひくと震えている翠の手枷を外して、観客に全身を見せる。
「なんと愛らしいおチンチン!ちょっと可愛がってやりなさい」
ぴくぴくと揺れる翠のペニスを、男がぬるりとした液を纏った手で擦り上げた。
「ひゃ、ゃ、ぁぁんっ」
愛らしい顔をいやらしく歪ませて、翠が悶える。
「ハァハァ、児童ポルノなんかもたまにはいいもんです・・・。では5億2千万からどうぞ!」
8
ステージの上の翠のいやらしさに酔う観客達の中で、かつらを被り変装した春臣は自責の念に耐えながらオークションに参加していた。まさかオークションに出品される予定の鳥の憑き人が翠だとは、翠が拐われるまでつゆにも思っていなかった。そして行方不明になっていた蛇ノ目が、闇オークションのオーナーであり、翠を拐った本人、特殊警察の中に犯人がいたなどとは。
そしてこの異様過ぎる熱気。何かよくない香が炊かれていると連れてきていた狼憑きの部下2人が言う。
「これは・・・対哺乳類の興奮剤ですね。部長、これ、飲んでおいてください。新しい物質なので確証はありませんが、獣変化した時にタンパク質を壊すくらい体温を上げる物質が微量に、匂います」
「ああ、そうな。高級な純度の高いイイ原料で作ってやがる。蛇ノ目前部長は相当金が欲しくて、誰にも邪魔されたくないらしい」
不自然な行動は取れず、鼻と口は覆えない。多量の香を取り込んでいる春臣は薬を受け取り、飲み込んだ。
「8億3千万!!いかがですか?いかがですか?・・・落札です!ありがとうございます!!」
司会の男が言う。競り落とした男は笑っていた。
狼憑きの2人がステージに向かう。軽い身のこなしで、素早く翠を捕らえている男を気絶させ、翠を奪った。
「くそ、待てっ!」
狼憑きを追おうとした蛇ノ目の前に、春臣が立ち塞がる。
「迎撃部隊!」
蛇の目が叫ぶ。会場のあらゆる場所から春臣に銃口が向いた。
数百人が引き金を引く。
白獅子が吠えた。
9
白い獅子の周りに緑色のバリアが張る。銃弾が来た角度へ跳ね返り、回りは沈黙した。
参加者達は落札者を含め、既に会場にはいない。違法と知って参加していたのだから当たり前だ。会場には、ステージに立つ蛇ノ目と、獅子が一頭のみ。
「かかったな、白亜。お前が俺の後釜になるだろうことは予想できた。その白子特有の呪われた超能力も勿論知っている。獣変化したお前に命はない」
高笑う蛇ノ目。白の美しい獅子はグルル、と威嚇するように喉を鳴らした。距離を詰めていく。蛇ノ目は勝ち誇った表情を引っ込め、青ざめていく。
「白亜・・・お前、何ともないのか?哺乳類に利く興奮剤と獣変化した瞬間にタンパク質が壊れる香を、俺は、炊いたんだ・・・!」
蛇ノ目の脳内に声が響く。
『うちの優秀な狼に薬を、ね。蛇ノ目先輩』
蛇に変化した蛇ノ目。すかさず飛び掛かった白獅子は、蛇の頭を左前足で捕らえた。
『い・・・っ白亜、止めろ・・・っ』
『先輩は毒をお持ちですから。それに私は今何故か異常なくらい興奮している。・・・特殊警察が犯罪者の中でも身内の裏切り者に厳しいのは先輩もご存知のこと。先輩、今のご自分の立場、ご理解なさっていますか?』
冷ややかな緑の瞳。
頭に爪を刺され息絶えた蛇の隣に獅子が佇む。薬の効力で体温は一定以上上がらないものの、興奮剤が蝕んで、性的に昂る。無意識に喉を鳴らした。
10
狼憑きの2人が、翠をベッドへ連れていった。裸の体にシーツを巻いて、翠は足を崩してベッドに座る。狼憑きの2人は静かに翠の傍にいた。
「春臣は、ライオン・・・?」
ショックから暫く黙っていた翠が最初に口にしたのは、それだった。逃げるとき、獣の咆哮が聞こえた。
「知らなかった?」
凄く格好いいよ、と優しい口調の狼憑きが言う。
「白亜先輩は白変種だ。群れを作る動物社会で色が違うっつーのは、あんまりいいことじゃない。でも、だからこそ、先輩は強い」
力説する狼憑きは、ぐっと拳を握った。
「高須教授にお世話になったって聞くけど、翠君のお爺ちゃんだよね。空手の師範代か何か?」
「ぁ・・・」
翠はまだ大学教授をしていた数年前の祖父の言葉を思い出す。確か、一頭の生きる意思を無くしたライオンと生活していると言っていた。
「お爺ちゃんは、動物の心が専門の大学教授でした・・・」
それから翠は、狼憑きの2人から色々な思出話を聞いた。一段落ついて、風呂に入るのを手伝おうかと提案した2人に、丁寧に断りを入れる。とろりと液が垂れるお尻が気持ち悪かったが、動きたくなかった。
狼憑きの携帯電話が鳴った。
「はい、はい、わかりました。先輩帰ってきたって!無事!でもお香はまだまだ抜けないみたい。会えないね。でも、大丈夫だった!」
翠に微笑みかける。安堵した。2人が部屋から出ていった後、翠は泣いていた。理由はわからなかった。
隣の部屋で大きなものが倒れる音がした。
「はるおみ・・・?」
翠は部屋を出た。
11
きぃと扉を引く。体に巻いたシーツをぎゅっと握る。部屋は大きな窓があり、月が見えていた。明るい。月明かりに照らされた大きな白い獅子が一頭、優雅に寝そべっている。
「はる、」
『来るな』
頭の中に声が響いた。獅子がこちらを見ている。翠は歩みを止めた。
「・・・っごめ、ごめんなさい。僕が、簡単に捕まったから・・・」
『翠が謝ることではない・・・』
鼻を鳴らして、獅子は荒れたように立ち上がり、部屋の奥を彷徨する。
『守れなかった』
グルルと喉を鳴らす。痛め付けるように、壁に自身のしなやかな肉体をぶつけた。何度も繰り返す。
「やだ・・・っ」
駆け寄って、逞しい獣の首に抱き付いた。少し、熱い。
「はるおみ・・・?」
訝るように、獅子はくんくんと鼻を鳴らす。
『・・・翠のものではない匂いが残っている・・・どうして風呂に入っていない』
どんっと、押されて、床に転がる。シーツが捲れて、ぬるつく局部が獅子の眼前に曝された。
「ゃ・・・」
恥ずかしさにさっと頬を染める。
「・・・・・・ぅ」
獅子の緑の瞳から視線を逸らした。反り返る獣の性器に気づく。グロテスクなそれに、びく、と震えた。獅子は失笑して、翠に背を向ける。
『・・・すまない。怯えるな。香のせいで腫れが退かないだけだ。熱が冷めない内は獣変化も解けないらしくてな・・・。悪いことは言わない。私の理性がある内に、部屋に戻ってくれ』
耐えるように、それだけを口にした。
「ぼく、なおせる・・・?・・・お尻は、おちんちんを入れる、いやらしい穴って、オークションで・・・」
四つん這いになって、お尻を上げた。知らずに煽る翠の言葉に、獅子は熱を高める。
12
小さな背中に低く覆い被さる大きな獣は、ずちゅんずちゅんとゆっくりと長大な性器を桜色のアナルに出し入れする。膝を肩幅よりも開いて床につけ、翠はふるふるとお尻を揺らしていた。脳を溶かすような快感に、力が入っていない。
「ひ、はぁぁん・・・おちんちんっ、こしゅれぅ・・・ふにゅ・・・」
びくびくと震える翠の、狭いアナルは限界まで拡がって、意思を持つ生き物のように春臣を揉み込む。オークション会場で塗られた液が滑りを良くしていた。くちぅう、と吸い付く襞に、獅子は熱い息を漏らす。グルグルと喉を鳴らした。
「はひ、ぅ・・・はりゅぉみ、はりゅ・・・」
返事をするように、ぐちゅちゅっと熱い性器を押し込む。
『翠・・・』
「きゃぁ・・・らめぇ・・・っ」
少し動きを速めた太い性器が、絶えず前立腺を擦り上げている。とろろっと、翠の愛らしい性器から白濁が垂れた。
「はひ、ぁ、ぁ、おちんち、とろとろ、でてりゅ・・・はぅぅン・・・」
股間を覗き込まずとも、何かが垂れているのは感じて分かる。翠は性器に感じる未知の感覚に、恐怖した。
『心配するな、出せばいい』
「・・・んにゅ、はぁぅ」
春臣の言葉に、翠は安堵して、出すのを我慢していた白濁を、性器からびちゅびちゅと吐き出した。
「ひゃぁぁ、ん、ぁん、ぁ、ぁぁん」
仰向けにされて、お尻が上向くように小さな体を折り曲げている。獅子は上からえぐるように激しく穿っていた。翠は涙を散らしながらいやいやをする。
「ぁ、ん、はりゅぉみ、らめ、らめぇ、おちんち、ん、ごりゅごりゅ、しなぃで、ゃら、ゃ、ぁひぃぃんっ」
激しい快感に悶え、獅子の下から逃れようとするが、なだめるように大きな舌で顔を舐められる。翠は射精した。
「はにゅ、ん・・・」
ひくん、ひくん、と震えながら、気持ちよさげに目を細める翠。ぐっと中に刺さる獅子の性器が膨張した。
「ぃゃ、ん・・・」
淫靡な予感に、爪先を丸める。
『すまない・・・っ、でる』
久しぶりに響いた春臣の声と、アナルに迸る熱く重たい粘液。
「・・・っ、ひ、ぁ・・・ぁちゅ、ぃ・・・・・・」
中に注がれる感覚に涙が流れた。ぶるりと獅子が気持ちよさげに身震いをして、性器を抜く。蜜壺から、どぷっと子種が溢れた。
「ぁ、ぁ・・・ぉわった・・・?」
震える翠の額に、柔らかな唇が触れる。
「ありがとう、翠。終わりだ」
裸の春臣に抱き上げられた。
13
シャワーで精液を掻き出した後、ゆっくりと湯船に浸かる。向かい合わせに抱き締められている翠は春臣を見上げた。緑の瞳と視線が絡む。
「・・・獣に蹂躙されて、怖かったろう」
頬にぺたりと大きな手が添えられる。翠は首を振った。
「ただのライオンじゃなくて、はるおみだったから・・・」
大きな茶色の瞳は、次に続いた大丈夫といいう言葉とともに、伏せられる。今更に恥じらっているようで、小さく体を捩った。
「・・・翠」
ぎゅっと強く抱き締められる。
「ああいうことは、獣の形のまますることじゃない」
おちんちんを、おしりにいれること?と小さく聞いた翠。春臣は頷いた。
「小さな翠にさせることでもない上に、本来なら、愛し合うための行為で、あのように一方的に征服するような真似は、愛していたとしても許されることじゃ、」
春臣の言葉は、翠の小さな桜色の唇に止められた。ちゅ、と離れていくそれ。
「いっぽうてき、じゃないも・・・。・・・春臣、すき・・・」
春臣を見つめて、再び翠は唇を押し付けた。
「・・・僕のこと、きらい?」
小さな桜色の唇は、噛みつくようなキスに奪われる。唇が離れた後には、ひくひくと震えて涙目で春臣を見つめる翠がいた。
「・・・翠、愛している」
耳元で囁かれた言葉に、翠はきゅっと春臣に抱きついた。
おまけ
後日、鷹にのろける翠がいたとか。
『まじで!?』
「ぅん・・・。らいおんのえっちもね、たまにおねがいするの」
『気持ちいいの?』
ピンク色になって、こくりと頷く翠。
『・・・まぁ、こんな可愛い翠にお願いされちゃ、倫理観がどうとか言ってる真面目も獣姦しちゃうな』
『だな』
『白亜の旦那、いい嫁さんゲットしたなー』
『俺も欲しい』
口々に思い思いのことを言っている。
「・・・じゅうかん?」
直後に遊びにやってきた狼憑きにじゅうかんってなに?と聞いた翠が、春臣に獣変化を拒否されるのは、また夜になってからのことである。