バスタブ
茶菓子にはできない
1
柔らかい光がさす日曜の午前9時。広く美しい庭と立派な門のある屋敷。縁側を懐石を運ぶ侍女が通っていく。
「泪、あなた、今日はうちにとって大切なお客さまがいらっしゃるのですからね。しっかりおもてなしするのよ」
「はい、母上」
着物姿で正座する整った顔立ちの青年は、黒い切れ長の瞳を品よく伏せた。
「久しぶりの茶会、皆さんがあなたのお茶を楽しみにしていますからね」
青年、花京院泪(かきょういんるい)は茶道の家元の息子であり、次期家元。洗練された所作と雰囲気は流派の者全てが認めている。
都内の有名私立高校の下校時間の校門。ブレザーを着た生徒が続々と出て行く中で、中学校の学ランを着た小さな少年、杉田周(すぎたあまね)は目立っていた。白い肌と柔らかそうな茶色の髪。可愛い顔。少し涙目になっている周を見て、ある女子生徒が声をかけた。
「誰か待ってるの?」
頷く周。
「・・・はぃ、あの。るい、を・・・」
「え、るいって・・・あの花京院?」
周は再び頷く。女子生徒は驚いた顔。
「・・・周?」
よく通る声。周はぱっと振り向いた。
「るい・・・っ」
泪に飛びつく周。周の幸せそうな表情に、女子生徒はもちろん、帰宅する他の生徒も注目した。周が可愛いというのもあるが、泪は学校で近寄り難いと評判で、名前で呼ぶ人間などいない。
「あいたかったの・・・」
周の言葉に、優しく笑んだ泪。周りにいた生徒が目を見開いて、頬を染めた。
次の日の学校が、その話題で持ち切りだったのは言うまでもない。
2
周の家は泪の家に近い。初めて泪が周に出会ったのは、まだ泪が中学生だった頃の父が亭主の茶会だった。周の母は生徒として、月に二回、花京院に通っていた。泪の母とも仲がよい、貞淑な女性だ。茶会にはいつも小学生の周を連れて来ていた。始めは、周が正座に耐えられなくなると周の母が周を連れて茶室から出ていたが、それでは彼女が茶会を楽しめない。泪が家元の資格を取った日から、周の面倒は泪が見ることになった。小さな周は泪によく懐いた。茶会の間ずっと甘えるように泪の傍にいた。帰る時には悲しそうな表情さえするようになり、ある時、周の母は泪に言った。既に出会ってから2年が経っていた。
「周ね、もう4年生でしょう?あの子は茶道を習ってるわけじゃないから、一人で留守番させようと思ったんだけど、茶会に行くって聞かないの。あなたのこと、随分気に入ったみたい」
よろしくねと言われ、泪は自然と笑みが零れて是の返事をしていた。周が泪に対して特別な感情を抱いているのは誰の目にも明らかだったが、それが恋だと感づいている者は泪だけだった。熱心に慕う幼くいじらしい少年だけが、泪の表情を和らげた。
今、小学生だった周は中学校に入学し、泪は大学受験を控えている。会える時間は少なかった。
着物を着た泪が茶を点てる。周は正座をして、泪を見つめていた。泪は帰って一番に一度の稽古を習慣づけているため、学校帰りに泪の家に来る周は、まず彼の客になる。周はこの儀式のような時間が好きだ。何より、茶を点てる泪は美しかった。すっと椀を差し出される。もう母と茶会に来ることはなくなったが、作法だけはしっかりと体が覚えている。椀を回して口をつける。少し苦い茶が口に広がった。温かい。
「おいし・・・」
微笑んだ周に、泪が会釈する。
3
「この項が、式の中で一番に文字数が多いから・・・」
「ぁ!」
周が数字をノートに書き込む。
「正解だ。次は応用」
「ぅん」
周が泪と会えるのは木曜日だけだ。周は泪に会いたくて、苦手な数学を見てもらうことを名目に、泪に時間をもらっていた。泪が大好きな周は、だから時々罪悪感を感じる。受験勉強に忙しい泪の時間を自分の我が儘が削っているのが、後ろめたい。本当は邪魔に思っていたりしないだろうかと、自分ばかりがこの時間を楽しみにしているのではないかと、周は不安に胸が苦しくなる。だからといって、直接聞いても優しい泪が本心を言うとは思えない。
でも、今日はと周は思う。泪のことを知る親友に相談したところ、一つの智恵を授けてくれた。親友は、泪が自分のことを邪魔だと思っていないか間接的に聞きたいと相談した周に、にやにやと笑んでこう言った。
「そうだな・・・僕を食べてって言ってみたらどうだ?全部、わかるぜ?」
食べてってどういうことだろう。周は思う。茶菓子を食べる泪の姿が思い浮かぶ。茶菓子は、泪の綺麗な指に摘まれ形のよい口元へ。そして、粘膜の中へ投じられる。
「ん・・・っ」
周の口から、はぁっと息が漏れた。意味もわからずぞくぞくする。周の頭に残ったのは、興味だった。
「周?」
どうしたと泪が問う。
4
「あ、ぁの、泪、るい・・・」
縋るように泪のワイシャツの袖を掴んで、周は泪を見上げる。
「うん、何?」
懸命さで舌を縺れさせる周を、泪はゆっくりと優しく丁寧に、促した。ふわふわの茶髪を撫でてやる。
「・・・ぁのね、ぼくを・・・たべて・・・」
泪は一瞬、表情を強張らせたが、ほんの一瞬のことで、周は気づかなかった。
「・・・今、何て・・・?」
周はもう一度、言う。大きな瞳は泪を見つめていた。
「僕を、食べて・・・」
突然、唇を塞がれた。周はびっくりする。舌が口の中に入って来て、粘膜を擦った。
「ん、ん・・・はっ、ふ・・・ちゅ、ふ・・・」
息を乱す。唇が離れる頃には周はくたりとして、泪に身体を預けていた。
「周・・・」
「はぁ、は・・・るぃ・・・今、ぼくのこと、たべたの・・・?」
泪は、知らずに言ったのかと苦笑した。
「いや、こんなの、食べたうちに入らない。周のおいしいところ、俺が食べてもいいんだろう?」
耳を甘噛みする。周はびくっと震えた。
「・・・やっぱり、お茶菓子みたいに、食べちゃうの・・・?」
痛いのはいやと周は少し涙ぐむ。
「まさか。茶菓子にはできないことだ。周も、痛くない。気持ち良くしてやる・・・」
泪は意地悪く笑った。
「きもちく、なる・・・?」
謎は深まるばかりで、周は首を傾げた。
5
畳の上で裸にされて、周は今から食べられるのだと緊張した。乳首に舌が当てられて、くすぐったい。ちゅうと吸われてじんじんとした痺れが身体を支配した。
「ぁ、へんなの、おかしぃ・・・」
思わずふとももを擦り合わせた。腰が揺れる。泪が足のつけ根を撫でた。
「ひゃ・・・」
周の頬が染まる。身をよじった。泪はくすりと笑んだ。膝の裏を掴んで、ぱかりと周の足を開いた。周の全てが丸見えになる。小さく首をもたげた性器がふるりと揺れた。
「可愛い・・・」
泪は幼い性器を見つめた。
「やぁ・・・おちんち、みなぃで・・・」
隠そうと周は股間を手で覆う。静かに、泪が見せるように言った。
「だめぇ・・・」
羞恥に震えている。泪は俺の言うことが聞けない?と周の頬を撫でた。観念したように、手が退けられた。泪はおもむろに、ぱくりとそれを口に含む。
「ふぇ、ひゃんンっ、あ、ぁあぁっ、らめ」
白く細い足首。ぴんと張った爪先が、宙をかく。
「はぁぁんっ・・・あぁぁっやあぁあーっ」
頭の中が真っ白になって、何かが弾ける。周は射精していた。泪の喉が鳴る。
「ぁ、ぁっ・・・ん・・・」
涙がこめかみを伝う。身体が痙攣していた。
「るぃ、のんだ・・・?」
不安げな瞳。おいしかったよと泪が言う。
6
「あぁ、あっ・・・るぃ、るい・・・ゃぁあぁあんっ」
四本もの指をアナルにくわえて、周は白くて柔らかそうなお尻を小刻みに振った。畳には周の白濁が水溜まりになっている。
「はぁぁあっ、んぅ・・・ぼく、また、また、きちゃ・・・」
睾丸がひくくんと淫らに引き攣った。
「やら、やぁ、くりゅの・・・ぁっ、ぁあっ、んンっ・・・」
びちゅっびちゅっと精液が散った。周は脱力し、しどけなく四肢から力を抜く。
「ん、ぁ・・・はぁ、はぁ・・・」
泪がズボンの前を開いた。反り返る性器を、周は視界の隅で確認する。お尻の穴に熱い先端を感じて、身をよじる。
「りゅぃ・・・?」
「は・・・っ、ごめん、余裕ない」
泪はふと苦笑して、周の胸の辺りにちゅっちゅっとキスを落とす。ぐぐっと力をかけて、ずぷぷと熱い性器を入れた。
「ひ、はぁ、あ、くふ・・・ん」
ぎゆっと目を閉じてはくはくと息をする。周はぎっちりと詰め込まれたそれに、息苦しさを感じずにはいられない。
「周」
名を呼ぶ声。周は自分に覆いかぶさる泪を涙目で見つめた。泪の眉間には皺が寄っていて、周はおろおろした。
「るい、るぃ、くるしぃ・・?ぼくが、るぃのおちんちん、きゅってしてるから・・・?」
なんてことを言うのだろうと、泪は愛らしい周を見つめた。
「・・・はずれ」
周の唇に、泪からの噛みつくようなキスが降る。
7
周の足を掴んで、形よく口角を上げた泪。
「周がいい子にしてたら優しく食べてあげる」
「い、こ?」
じゅぷじゅぷといやらしい音を立てて、泪は周の襞にゆっくりと性器を擦りつける。
「っひぁあん、りゅいのおちんち、おっき・・・」
「周のなか、おいしいよ・・・」
「ふぇ・・・おいし?」
泪は頷く。
「きゅうきゅう締めつけてきて、堪んない。とろけそうだ」
いい子だねと泪がいやらしく微笑むから、周は顔を真っ赤にして泪にしがみついた。ぐっと深く繋がってしまう。
「・・・っ周・・・」
「ひ、ぁぁっ、あ、あちゅいの、おちり、こわれちゃぅ、ひゃぁああんっ」
周は痙攣して、ぴぴっと少量の精液を自分の胸元に飛ばす。泪を締めつけた。
「くっ・・・は、でる・・・っ」
「ぃ、ぁあぁぁーっんんーっ」
のけ反る周。焦点の合わない潤んだ瞳が揺れる。
「ぁ、ぁふ・・・りゅぃの、でてゆ・・・きもち・・・」
ずるっと泪が性器を引き抜いた。
「ぁ、ぃゃぁ・・・」
喪失感に周が物欲しげな顔をする。苦笑した泪。
「今日はここまでだ・・・」
ちゅと静かに周にキスをする。初めての行為を優しく済ませることができて、泪は安心していた。心の中にはいじめたい欲望が渦巻いている。これ以上は、危ない。それなのに、周はまだ涙目で泪を見つめていた。
「いやなの・・・もっと、して・・・るぃ、もっとぼくをたべて・・・いぃこに、するの・・・」
くぱぁっと指でアナルを広げた周。白濁がとろりと漏れた。外気に触れた肉が震えている。
「ひ、はぅう・・・ぁ、ぁ、さっきみたぃに、ぐちゅぐちゅって、たべてぇ・・・」
泪は目眩を感じた。
「どこがいい子なんだ・・・?」
呟きは、甘い声に掻き消えた。