top of page



髪を切らせて骨を抜く



めぐ君、と名前を呼ばれて、僕、小椋恵(おぐらめぐむ)は顔をあげる。こちらへ駆け寄る男の人が見えて、僕は公園のベンチから立ち上がりました。スマートフォンをリュックのポケットに仕舞います。
「ごめんね、待った?」
申し訳なさそうに下がった綺麗な眉に、僕は慌てて首を振りました。待ったけど、僕が約束の時間より20分も早く来ていたからで、それに、まだ5分前でした。そう言いたかったけど、緊張している僕の口から出たのは、待ってませんの6文字だけ。瀬戸和貴(せとかずき)さんは、それならいいけどと言って、持っていたビニール袋からペットボトルを取り出します。
「この公園、この時間は日陰もないのか。まだ5月なのに暑いね」
僕は差し出された飲み物を受け取りました。
「好きだったよね?」
問われて、少し恥ずかしいけれど、僕は頷きます。
「ありがとうございます」
最近は飲まなくなったけど、小学生の時は良く飲んでいました。
「懐かしいな。最後に会ったのは4年前か。今年から中学生なんだな。背は・・・あんまり伸びてない?」
ふ、と微笑んだ瀬戸さんの綺麗な顔から思わず目を逸らしてしまいます。さっきまでスマートフォンで見ていた顔でした。瀬戸さんは美容師で、日常の写真や、お仕事関係の動画もインターネットで公開しています。背が高くてかっこよくて、物腰が柔らかくてすごく優しいから、フォロワーもたくさんいます。ペットボトルのキャップを取って、僕はいちごミルク味の冷たい液体を飲む。昔、瀬戸さんがくれたから好きになったものでした。



瀬戸さんの住むマンションは、待ち合わせた公園からすぐの場所にありました。カードキーを機械に翳した瀬戸さんに続いて、エントランスへ入る。
「電車、迷わなかった?」
僕は首を横に振りました。
「部活でここの近くの学校に練習試合に来たこともあったから、大丈夫でした」
エレベーターに乗って、階を上がる。エレベーターのガラス窓からさっきまでいた公園が見えました。
「バドミントン、続けてるの?」
瀬戸さんの問いに、頷きます。瀬戸さんとお兄ちゃんに憧れてクラブに入ってから、ずっと続けていました。瀬戸さんやお兄ちゃんみたいな成績は、残せてないけど。瀬戸さんが微笑みます。ベルが鳴って、エレベーターを降りました。瀬戸さんの背中を追って、歩く。キーを翳して開錠した瀬戸さんが、ドアを開けてくれます。
「はい、どうぞ。準備するから、呼ぶまでそこのソファに座ってて」
白い大きなソファを指さしました。僕は頷きます。
「おじゃまします」
瀬戸さんの部屋に足を踏み入れました。




「髪質も変わらないね。張りと艶があって、目立つ癖もなく、柔らかい」
髪を梳く指が心地よいのと、嬉しそうな瀬戸さんの声に僕は少しほっとします。緊張がほぐれました。正面の大きな鏡には、椅子に座る首周りに大きな布を巻かれた僕と、鏡の中の僕を見る瀬戸さんがいます。
「小椋の天然パーマとは大違いだ」
瀬戸さんが笑いました。瀬戸さんの言う小椋は、僕のお兄ちゃんのこと。瀬戸さんは、専門学校に通っていた頃に、よく僕のお兄ちゃんの髪でカットの練習をしていました。羨ましそうに見ていた僕に声をかけてくれて、僕も切ってもらっていました。
「スタイルはおまかせって聞いてたけど、本当に希望はない?長さとか、有名人のイメージとか」
首を横に振って、おまかせで、と僕は言いました。
「瀬戸さんが、似合うと思った髪型にして欲しくて、僕・・・」
今日のために、前髪も少し伸びた状態で、他の部分は半年くらい切らずにいました。でもやっぱりそれも言えなくて、口ごもってしまいます。気持ち悪いやつと思われているかもしれません。
「勿論、似合うスタイルにするよ。そうだね、綺麗に伸びてるし、ちょっとトップの長さを残しつつ、これから暑くなるから刈り上げなんてどうかな」
髪に櫛を入れながら、頭の形を確かめるように指を動かして、襟足の髪を優しく持ち上げます。耳を撫でた指がくすぐったくて、僕は少し身じろぎしてしまいました。
「耳が弱いのも変わってないね」
くすりと笑われて、僕は思わずごめんなさいと言ってしまう。
「サイドとネープをがっつり刈り上げて、丸みのあるシルエット・・・、要するにボブなんだけどね。うん、・・・いいね。控えめに言って最高だな」
うんうんとひとり頷いて、瀬戸さんは腰に巻いた革のケースから鋏を取り出しました。


10分もせずにカットは終わって、瀬戸さんは手に持った鏡で後ろの髪がどんな風になっているか見せてくれました。
「かわいい。俺好みの清楚さ。眉も整えようね」
鏡を置いて、小さな櫛で眉を梳きます。僕はこくんと唾をのみました。どきどきして、喉がからからでした。
「・・・好み?」
「カット無料にする代わりにスタイル写真を撮る約束したの、覚えてるよね?」
僕の小さな声は、瀬戸さんの問いに掻き消される。瀬戸さんは、昔もよくヘアカットの後に僕とお兄ちゃんの写真を撮っていました。僕は頷く。首周りの布を外してもらって、僕は椅子から立ち上がりました。漆喰の壁の前だな、と言う瀬戸さんに手を引かれて部屋を移動します。言われるままに姿勢を変えて、カメラで写真を撮られました。パソコンのモニターで写真を確認する瀬戸さんに、僕は意を決して声をかけます。
「もうひとつ、お願いを聞いてもらえますか?お金、ちゃんと払うので・・・」




僕はリュックから、ビニール袋を取り出しました。袋のチャックを開けて、黒いロングのウィッグを取り出します。貯めたお小遣いをはたいて、デパートで買いました。これをくださいと言ったとき、店員のお姉さんはいろいろと聞いてくれようとしたのに、恥ずかしさに話を遮って、とにかくこれをくださいと言って購入したものでした。
「これ、めぐ君が買ったの?」
目を丸くして、瀬戸さんが言います。僕は頷きました。瀬戸さんに渡します。
「いいものだね。問題はなさそうだけど・・・。付け方かな?うん?ああ。めぐ君の頭と、サイズが全然違うな・・・」
ウィッグを持っていない左手で自分の首を揉んだ後、しゃがんでいた瀬戸さんが立ち上がる。床に座ったまま、僕は瀬戸さんを見上げました。
「ちょっとここで待ってて」
そう言って部屋から出た瀬戸さんは、手に袋を持ってすぐに戻って来てくれました。
「店の在庫で、ちょっと安ものだけど。・・・あ、お代はいただきません」
再び手を引かれて、部屋を移動する。切った僕の髪がまだ落ちている半透明のビニールシート上の椅子に戻ってきました。


瀬戸さんが髪をまとめるネットの使い方も教えてくれて、鏡の前には長い黒髪のウィッグをつけた僕がいる。シャキシャキと髪を切る音を聞きながら、僕は鏡の中の自分から目が離せません。僕だけど、僕じゃない。元々女の子みたいと言われる僕の顔ですが、髪を長くするだけで、本当に女の子になったみたいでした。
「バックとサイドはこんな感じかな。サイドはレイヤーを入れて軽やかにしています。後で内側にワンカール入れるね」
瀬戸さんが細長い機械を取り出して、コンセントに電源プラグを差します。
「前髪は、流す?それとも切り揃えようか?厚めか、薄めか・・・」
「・・・瀬戸さんの、おすすめ、で」
かっこいい二重の瞳と見つめ合います。瀬戸さんが怒っている気がして、僕は思わず唇を引き結んでしまいました。
「俺のおすすめね・・・。じゃあ、シースルーバングがいいな。長さは眉の下あたりで切り揃えるよ」
声のトーンが、さっきよりずっと低いことに気づいて、僕は動揺します。おすすめをお願いしたのが、気に障ったのかなと思い考えてみると、自分の姿に舞い上がっていて気づかなかっただけで、もっと前から、瀬戸さんは怒っていたような気がしてきました。
「前髪を切るから、目を閉じて」
言われた通り、目を閉じます。
「ウィッグをカットして欲しくて、俺に声をかけたの?」
動かないように気を付けながら、はいと答えます。髪は、誰に切ってもらっても正直構いませんでした。いつもお父さんと行く美容院に、不満はありません。ウィッグのカットをお願いしたくて、僕は瀬戸さんのSNSに連絡したのです。友達の弟という立場を利用して、お店は緊張するから、瀬戸さんの家がいいとメッセージに我儘も書きました。ウィッグをカットしてもらうのに、人目があると恥ずかしかったからです。瀬戸さんは、休日なのに僕に付き合ってくれました。
「こんなに可愛くして、外に出るつもり?」
かわいい。瀬戸さんの言葉に、僕はまた舞い上がってしまいました。
「瀬戸さんから見て、僕、ちゃんとかわいいですか?」
「・・・すげぇ可愛いよ。はい、前髪もこれでよし。・・・質問に答えて」
僕は目を開きます。鏡には、可愛い、僕がいました。瀬戸さんが先ほどコンセントに差した機械を手に取ります。嬉しくて、質問を思い出すのに時間がかかりました。
「ぁ、ぁっ、そと・・・?このかみで、そとにはいかないです」
そんな恥ずかしいことできるわけない、と僕が言うと、瀬戸さんは訝しむ顔。
「それなら、何のために?」
瀬戸さんが機械に髪を挟んで、動かします。真っ直ぐだった髪が、内側にカールしました。左右両方の髪が内側にくるんとして、さっきよりもずっと可愛いです。僕は、ぎゅっと目をつぶりました。勇気を振り絞ります。
「瀬戸さんが、まえ、長い黒髪の子が、すきって、言ってたから・・・」
どんどん声が小さくなってしまって、僕は俯きました。確かに、瀬戸さんはそう言っていました。僕だって、そんなの、言われなくても、女の子のことに決まってるって、わかってる、けど。
「・・・え?めぐ君、俺のことが好きなの?」
僕は、頷きました。




顎を少し上げられる感覚のあと、唇に何かが優しく触れました。僕は、目を開きます。大好きな瀬戸さんの顔。僕の唇に、瀬戸さんの薄い唇が当たっています。
「ぁ、」
離れる感覚に、僕は思わず瀬戸さんのシャツの袖を掴みました。
「・・・もっとしてもいいの?」
耳に髪を掛けられて、耳元に瀬戸さんの口が近づきます。ぺた、とすこし冷たい舌が触れました。耳の凹凸に唾液を塗るみたいに舐め上げられます。僕は、変な声を出して、震えました。もっとしてもらえる可能性へのとてつもない歓喜は、その上をいく刺激にすぐに塗り替えられてしまいます。何をしてもらえるんだろう、とあさましい僕の中で期待ばかりが膨らみました。
「ふふ、可愛いね」
僕の勃起したおちんちんを布の上から撫で上げて、瀬戸さんが耳元で笑います。


ふかふかのベッドは、瀬戸さんの香水の匂いがしました。瀬戸さんの肌からは、香水だけじゃなくて、瀬戸さんの匂いもします。着痩せするらしい引き締まった身体に自分の裸の身体をくっつけて、僕は自分の勃起したおちんちんを揉む。どうしたいかと瀬戸さんに聞かれて、瀬戸さんを感じながらオナニーをしたいと言ったのは僕でした。
「女の子みたいな顔で身体も小さくて華奢なのに、ペニスはそれなり。倒錯的だと自分でも思う?」
とうさくてき、の意味がわからなくて、僕は瀬戸さんを見ます。暗いブラウンの髪を掻き揚げて、瀬戸さんも僕を見ました。かっこよすぎて、見たいのに、見られません。
「ん、」
唇を吸われて、口の中に舌が入って来きます。瀬戸さんの舌に舐められて、僕も舐めて、気持ちよくて夢中になりました。僕のおちんちんは精液みたいな先走りを垂らして、僕の手の中で濡れています。瀬戸さんの指が乳首を優しくふにふにするたび、電気が走るみたいに腰が痺れました。
「ちゅ、ちゅ、ふ、ぁ・・・あ、ん、ぃっちゃぁ・・・ぃっちゃぅ・・・っ」
こんなきもちいいの、しらない。瀬戸さんの首に鼻をくっつけ、息を止めて、僕は射精しました。
「・・・っふぁ、ぁ、ふ・・・ぁ・・・」
身体が弛緩して、気持ちいい。僕の精液が瀬戸さんのはだけた胸まで飛んでいます。瀬戸さんはそれを指で取って、舐めました。
「俺も気持ち良くなりたいな」
瀬戸さんがおちんちんを出します。僕のよりずっと大きくて、太い。僕は見惚れました。
「・・・舐めて」
こくりと頷いて、熱いおちんちんに舌をあてます。手を添えて、舐め上げました。瀬戸さんが僕の髪を優しく撫でてくれています。ぺろぺろと舐めていると、気持ちがいいときの僕もそうなるように、先端から液体が流れ出てきました。嬉しくて、口に含んで、舐めて、吸います。先端と少ししか口に入らなくて、たくさん涎が垂れました。涎で濡れたおちんちんを手で擦りながら、先端をくちゅくちゅと舐めます。瀬戸さんの気持ちよさそうな息遣いに、僕も興奮しました。




「めぐ君、もういいよ」
瀬戸さんの声に、もっとこうしていたい気持ちを抑えて、口を離します。
「横になって」
言われた通りに横になった僕を後ろから抱き込んで、瀬戸さんは僕の涎に塗れた自分のおちんちんを、僕のお尻の下、太ももの間に差し入れました。
「ひ、ぁ・・・なぁに・・・」
左手で僕の腰を支えて、ぬるぬるの熱いおちんちんを擦りつけながら、瀬戸さんはまた固くなっていた僕のおちんちんを右手で気持ち良くしてくれます。
「ちんち、ぃぃ、きもち、ぃ・・・ぁ、ぁ、ぁはぁ」
声が漏れました。瀬戸さんの腰の動きが激しくなって、身体が揺れます。僕は太腿をぴったりと合わせました。瀬戸さんのおちんちんがぐちゅぐちゅと股の間の敏感な皮膚を刺激します。
「きゃ、ぅ、ぁ、ぁはぁ・・・っ、ふ、ぁぁぁんっ」
僕はすぐに射精してしまいました。
「ひ、ぁ、ぁ・・・」
「あー、やば・・・かわいい、めぐ君」
ひくひくと震えている僕を抱きしめて、瀬戸さんが僕のふにゃふにゃとろとろのおちんちんと、自分のおちんちんを重ねて、手で扱きます。
「ゃ、らめ、らぁめっ・・・ゃら、ゃ、らぁ・・・しょれ、ひ、ぅ、ゃ、ゃぁぁぁ」
痙攣する僕の身体を、瀬戸さんがベッドに優しく抑えつけました。
「ひ、ひ、ふ、ぁ、ぁ、ちんち、こわれゅ・・・はひ、ぁぁ、ん・・・」
僕のおちんちんからはおしっこみたいに液体が漏れています。瀬戸さんのおちんちんは僕のお尻の間に押し付けられていて、どくどくと脈打っていました。熱い液体が、お尻の穴の入り口にかけられる。お尻の穴の周りに射精する硬いおちんちんの先が擦りつけられる感覚を最後に、僕は意識を失いました。



目を開くと僕は瀬戸さんに抱き込まれて、あの白くて大きいソファに横になっていました。夕日が部屋の中を照らしています。僕は、静かに寝息を立てる瀬戸さんの顔を覗き込みました。初めて見る瀬戸さんの寝顔。あんな意地悪な表情も、初めてでした。
「ぁ・・・・・・ぼく、・・・ぇっち、した・・・それも、すごい、の・・・」
思い出すと心臓がばくばくとうるさく鳴って、めまいがしそうでした。腰のあたりがずくりと重くなる感覚に、僕はおちんちんを触りました。僕は瀬戸さんのものらしい青いスウェットを着せられている他は裸でした。おちんちんは少し硬くなっていて、撫でると気持ちがいい。僕の身体は綺麗に洗われていて、髪は短くさっぱりしています。ソファから起き上がって、部屋を見まわし、僕はウィッグを探しました。リュックの傍に置かれているのが見える。リュックに、女装のためのセーラー服と、下着を入れてきたことを思い出しました。心臓が壊れそうなくらい、どきどきしています。
「また、してくれるかな・・・」
僕は、瀬戸さんの胸に顔をうずめました。


© 2008 Haruno All Rights Reserved.

bottom of page